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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第五話特別寄稿 難しさが面白さ?
〜原産地規則の魅力〜

『原産地規則のイメージを聞かせてください!!』

「聞いたことはあるけれど、すごく難しそう」
「EPAの条文を見たことがあるけれど、複雑な記号が並んでいて意味が分からない。」
これらは初めて原産地規則の研修を受ける人に対し、研修前にその印象を聞いた時によく聞く回答です。
やたらと記号が並ぶ上に、複雑な条文に面喰い、勉強しようにも何から始めて良いのか分からない・・・。
原産地規則というのは、数ある貿易や税関に関する手続きの中でも、最初の一歩がなかなか踏み出しにくい分野の一つではないでしょうか。
筆者もまさにご多分に漏れずそうでした。

現在、筆者はJICA専門家として、マレーシアのプトラジャヤにあるマレーシア税関で、EPAやFTAの原産地規則(特恵原産地規則と呼びます)に関する制度作りや、原産地規則についてのマレーシア税関職員の能力向上のために活動しています。その前は日本と各国とのEPA交渉の中で、原産地規則の担当官の一人として、相手国との交渉会合に参加し協議を行う仕事をしていました。

今でこそ、曲がりなりにも原産地規則の知識を使ってマレーシアの制度作りのお手伝いをすることを仕事にしていますが、最初にこの分野の仕事に就いた時は頭の中が「???」でいっぱいでした。例えば、ある条文の説明を聞いていると「VAルールを使用した時のQVCの計算では、原産材料に含まれる非原産材料はVNMとしてはカウントしない・・・」という具合。こんな短い文章の中にも、略号や専門用語がどんどん出てきます。しかも、EPA毎に書いてある内容が微妙に違ったり、言い回しも異なったり・・・と、勉強していけばいくほど頭がクラクラして、心も折れかけました。

でも、これは原産地規則に限らずどの分野でも共通だと思いますが、最初のハードルが高ければ高いほど、一度その世界に入って基礎的な事が分かるようになると、途端に面白くなってきます。実際、日本から講師を呼んでマレーシアで行った研修でも、研修前には冒頭のような反応だった研修生も、一週間の研修を受けた後のアンケートを見ると、ほとんどが「面白かった」、「もっと知りたい」という反応を返してくれています。

また、「難しい」のに面白いと思える理由の一つに、まだまだ専門家の数が少ないことがあるのではないかと思います。その事の良し悪しは別として、街の本屋さんに原産地規則に関する参考書がずらっと並んでいるわけではありませんので、分からないことがあっても、自分自身あるいは極限られた人達の中で答えを探していくしかありません。その事が良い意味で探求心をくすぐるのかもしれません。

そういえば、EPA交渉を担当していた時に、よく「原産地規則の担当者は、みな仲が良い」と言われていました。交渉の場では、参加者はそれぞれの立場を背負って参加しているので、譲れないものもたくさんあります。それでも原産地規則の担当者は国や省庁の枠を超えて分かり合える事が多かったように思います。「お互い本国や自分の属する組織に帰って原産地規則の話をしても、複雑すぎて他の人に理解してもらえないから、たとえ交渉の場であっても、原産地規則という共通の特殊言語を話す者同士、仲良くなれるのだ」、という少し自虐的な説もありましたが、この話は原産地規則の専門家が少ないということを、うまく言い表していると思います。

さて、このコーナーのタイトルは「原産地オタク達の八丁堀梁山泊」です。我々が「原産地オタク」なのか、それは良く分かりませんが、上記のような意味では、まだまだ仲間が少ない分野であることは確かではないかなと思います。マレーシアで原産地に精通した仲間作りに励みながら、このコーナーを通じて、一人でも多くの方が原産地規則に興味を持っていただければと願っています。

JICA専門家(マレーシア税関) 出口 雅也
2017年3月1日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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