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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第九話関税分類の世界から原産地の世界へ

筆者は現在、世界税関機構(WCO)の原産地担当部局に所属しており、原産地規則技術委員会(TCRO)の運営、原産地に係る調査、原産地規則の適用・実施支援のためのツール策定や技術協力事業等に携わっていますが、原産地の世界に入る前は、HS・関税分類に関わる仕事をしていました。

こちらの世界に入る前は、HSの様なマニアックな議論をしているのは関税分類担当の人たちだけだろうと思っていました。ところが、初めて日本と他国とのEPA交渉に出席した際、品目別規則(PSR)が議論されており、HSコードごとの物品の生産工程や原産地基準について何日間も熱い議論が繰り広げられる様を見て、とても驚いたことをよく覚えています。

またその際、原産地と関税分類は違う分野ではあるけれど、非常に関係が深いと感じました。なぜなら、ほとんどのFTA原産地規則において、品目別規則(PSR)はHS品目表に基づいて作られているからです。さらに、関税分類変更基準(CTC)が適用される場合は、最終製品と材料の関税分類(HSコード)によって原産地が決定されます。WCOが行った調査によると、貿易額が大きいFTAにおいて、70%以上の品目についてCTC規則が採用されています。このように、正しく原産地を決定するためには、正しく関税分類を行うことが前提になります。(さらに、原産地決定のためには、僅少の加工、デミニマス等の原産地独自の規定についても考慮する必要があるので、原産地規則は非常に複雑だと思います。)

したがって、多目的なツールを謳っている「HS品目表」は、原産地決定のために広く利用されていることを考慮して策定・改正されるべきだと思われるのですが、現状では、必ずしもこのことは十分に考慮されていない状況です。そこで、一昨年秋、HSを改正するにあたり、原産地規則の実施への影響が考慮されるべく、WCO事務局からHS見直し小委員会に提案を行いました。提案の内容は、@原産地決定のために有益なHSコードを設けること及びAHSコードの削除が原産地規則の実施に悪影響を与えないかを考慮すること、といった内容でした。この提案に呼応して、ある締約国から具体的なHS改正提案がなされ、現在、HS2022改正に向けてHS見直し小委員会等で審議中です。今後どのように議論されるかが楽しみです。

また、先に述べたとおり、品目別規則はHS品目表に基づいて作られている、つまり、貨物の分類(HSコード)と適用される原産地規則が対応関係にありますので、HS改正の前後でHSコードが変わる品目は影響を受けてしまいます。例えば、LEDランプは、HS2012においては独立した号がなく、その他の電気機器として8543.70号に分類されていましたが、HS2017では、LEDランプを分類するための号(8539.50号)が設けられました。もし、最新のHSに基づいた関税率表を使用している国にLEDランプが輸入される場合、当然、8539.50号に分類されますが、この物品に適用される原産地基準(PSR)を確認するためには、適用されるFTAの品目別規則(PSR)に用いられるHS(多くの場合、古いバージョンのHS)を使用して、LEDランプを分類しなおす必要があります。HS改正の背景や新旧HSの相関関係を熟知したHS・分類の専門家にとってはそれが可能かもしれませんが、そうでない大半の人にとっては、原産地規則の適用を誤ってしまう可能性があり、また、適用すべき規則の確認のために追加的な時間を要することになります。

このことから、理想的には、HS改正に合わせて、関税率表、原産地規則共に最新のHSに更新されるべきなのですが、FTA/EPAの更新には煩雑なプロセスを経なければならない場合が多く、また、技術的な複雑さもあることを反映して、世界の大半のFTA/EPA原産地規則はタイムリーに更新されていないのが現状です。

そこで、2015年、WCOでは、各国における原産地規則の更新を技術的に支援するツール「特恵原産地規則の技術的更新のためのガイド」を作成しました。現在、原産地規則の更新の重要性についての認識を広め、さらにこのガイドを利用して各国の原産地規則の更新を支援するための技術協力活動を行っています。このガイド及び原産地に係るWCOの活動に関する情報はWCOウェブサイトで一般公開されておりますので、ご関心のある方は是非ご覧いただければ幸いです。

筆者としては、今後、どのように原産地と関税分類が良い関係を築いていけるかがとても楽しみです。また、このような取り組みが、複雑な原産地規則の適用・実施を少しでも容易にするための助けになればと思っています。

世界税関機構(WCO) テクニカル・アタッシェ(原産地) 山手 俊彦
2017年6月27日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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