日本貿易関係手続簡易化協会(略称:ジャストプロ 英文略称:JASTPRO)のウェブサイト

原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第十七話中古品の原産地(後編)

今回は、材料に中古品を使用した製品のお話しです。前回、冒頭で引用した「使用したタイヤに再切込み又は再溝付けをした中古の空気タイヤ(第4012.20号)」から始めましょう。

さて、中古の空気タイヤとは何かを明確にしなければいけません。WCOのExplanatory Notesの日本語版である『関税率表解説』によれば、第40.12項には、『39類の物品から成るソリッドタイヤ及びクッションタイヤ、例えば、ポリウレタンのもの(通常17部)及び更生用に適さない破損したタイヤ(40.04)を含まない』としています。したがって、ゴム製以外のタイヤとか、もはや更生もできないボロボロのタイヤは含まれません。さらに、第4012.20号の中古の空気タイヤは、『摩耗したトレッドの溝(ただし、目視可能なものに限る。)を切込みによって深くすることにより、再切込み又は再溝付け』をすることがあるとされているので、典型的な中古の空気タイヤは、使い古した空気タイヤに目視可能な溝を切り込むことによって「生産」された物品と言えましょう。

次に、中古の空気タイヤの原産地規則です。下の表2から見てとれるように、一つのルールが中古の空気タイヤの原産性を決定する訳ではなく、関税分類変更基準、付加価値基準又は加工工程基準が選択的又は義務的(日インド)に設定されています。しかしながら、実際に適用可能なルールはある程度限定されてきますので、以下に概要を説明してみましょう。

【表2: 中古の空気タイヤの原産地】

EPA協定 中古の空気タイヤ(第4012.20号)
日モンゴル、
日タイ
類変更
TPP 項変更
日メキシコ 項変更(第40.09項から第40.17項までの項からの変更を除く)
日ペルー、
日アセアン
項変更又は付加価値50%(ペルー)40%(アセアン)
日豪 項変更又は付加価値40%:又は「化学反応」を伴う生産
日チリ、
日シンガポール
項変更又は化学反応、精製、異性体分離若しくは生物工学的工程
日ベトナム、
日フィリピン、
日マレーシア、
日スイス
号変更又は付加価値40%(スイス:非原産材料の最大許容額60%)
日インドネシア、
日ブルネイ
号変更、付加価値40%又は化学反応、精製、異性体分離若しくは生物工学的工程
日インド 号変更及び付加価値35%

まず、化学反応等の加工工程基準は新品タイヤに専ら適用されるので、実務上、本件への適用はないと考えられます。すなわち、加工工程基準では使用したタイヤを作り出すことは不可能ですね。付加価値基準であれば、材料の如何にかかわらず原産性の付与が可能です。すなわち、関税分類変更基準で使用したタイヤを使えない場合であっても、付加価値基準を満たせば使用したタイヤを材料とすることができます。

関税分類変更基準での比較を行うと、@「類変更」、A「項変更(第40.09項から第40.17項までの項からの変更を除く)」、B「項変更」及びC「号変更」に分けられます。@「類変更」ルールは、新品のゴム製空気タイヤ(第40.11項)及び中古のゴム製空気タイヤ(第4012.20号)からの変更を認めませんので、生産工程上の直近の材料となるべき産品のみならず、原料ゴムからの変更も許容しません(品目別規則を満たすことは不可能です。)。したがって、原産性を付与するには、原産品の第2定義(原産材料のみから生産される産品)の適用が最も容易な方法といえましょう。この場合、『摩耗したトレッドの溝(ただし、目視可能なものに限る。)を切込みによって深くすることにより、再切込み又は再溝付け』することは、明らかに生産(加工)に含まれます。

A「項変更(第40.09項から第40.17項までの項からの変更を除く)」は、@同様に新品のゴム製空気タイヤ(第40.11項)及び中古のゴム製空気タイヤ(第4012.20号)からの変更を認めませんが、一次製品等からの生産を許容します。しかしながら、一次製品等からの生産は、結果として新品の製品を生産することを意味し、中古のタイヤの品目別規則としては@の類変更と大差ないものとなります。

B「項変更」とC「号変更」は、事実上、第40.11項の新品タイヤ(使い古しているが、タイヤとして機能している)からの変更を容認するので、『摩耗したトレッドの溝(ただし、目視可能なものに限る。)を切込みによって深くすることにより、再切込み又は再溝付け』することで原産性が付与されます。この場合、中古のタイヤの方が新品として分類された使い古したタイヤよりもタイヤとしての機能が優れていることになりますね。少し、変な感じです。

最後に、未だ実施されておりませんが、TPPと日EUの中古品を材料とした産品の規則を簡単に触れることで、本稿を終えたいと思います。

【TPP原産地規則第3.4条:再製造品の生産に使用される回収された材料の取扱い】

TPP原産地規則のこの条文を初めてお読みになった方で、少し違和感を持たれた方もおられたのではないでしょうか。すなわち、全てのアセアン諸国とのバイ協定及びスイス、インド並びにモンゴルとの協定においては、『本来の目的を果たすことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から、当該締約国の領域において回収される部品又は原材料』を完全生産品として取り扱います。したがいまして、本体が廃品となる物品から一部の使用可能な部品を取り出した時点で、その部品は当初の原産国、部品としての原産性の有無にかかわらず、取り出した(締約)国の完全生産品となる訳です。我が国のEPA原産地規則における完全生産品定義の多くは、日シンガポール協定以来、WTO調和非特恵原産地規則案の完全生産品定義を採用した例が多かったようです。これに対して、TPPでは、完全生産品定義に回収された部品が含まれていないので、回収された部品が直ちに原産品になる訳ではありません。そのため、昨今のエコ思想の反映でしょうか、下の表4の市場アクセス章における中古品貿易の促進措置と相俟って、再製造品が原産品になりやすいように回収された部品を原産品扱いすることによる中古部品の利用促進という趣旨で本規定が挿入されたものと考えます。我が国の完全生産品としての回収された部品との相違は、下の表3のとおりです。

【表3:再製造品に係る取扱い比較表】

原産性を与えるための要件 TPP アセアン諸国とのバイ協定等
本体(中古品又は廃品)
取り出された部品に原産性を与えるために必要な本体の要件 なし。非原産品も可 本来の目的を果たせない、回復・修理不可能な物品。非原産品も可
取り出された部品の原産性
再製造品の生産に使用され、組み込まれる 無条件で原産品 本体の状態が要件を満たせば、部品は無条件で原産品(完全生産品)
再製造品の生産に使用されない 部品としての
原産性を判断
再製造品に組み込まれない
再製造品の原産性
取り出された部品を使用した産品の原産性 産品としての
原産性を判断
産品としての原産性を判断

表4:TPPにおける再製造品関連規定要旨(抜粋)

再製造品については、TPPの第1章(冒頭の規定及び一般的定義)第1.3条(一般的定義)、第2章(内国民待遇及び物品の市場アクセス)第2.11条(再製造品)、及び第3章(原産地規則及び原産地手続き)第3.4条(再製造品の生産に使用される回収された材料の取扱い)の諸規定があり、ポイントを箇条書きにすると、以下のとおりです。

《物品の市場アクセス》第2.11条
再製造品(a remanufactured good)の輸入及び輸出の禁止又は制限に関する規定(第2.10条1)は、再製造品の輸入の禁止及び制限について適用する。
第2章の附属書に規定される特定の再製造品を除き、締約国が中古の産品の輸入を禁止し、又は制限する措置を採用し、又は維持する場合には、当該締約国は当該措置を再製造品に対して適用しない。
《原産地規則》 第3.4条
TPP締約国で取得(derived)される回収された(中古)材料(a recovered material)が再製造品(a remanufactured good)の生産に使用され、及び再製造品に組み込まれる場合、当該(中古)材料は原産品とする。
再製造品は、第3.2条(原産品)の要件を満たすときにのみ原産品とする。
再製造品の生産に使用されず、又は組み込まれない回収された材料は、第3.2条(原産品)の要件を満たすときのみ原産品とする。
《一般的定義》 第1.3条

「再製造品」とは、第84類から第90類まで、第94.02項に分類される産品(例外あり)で、回収された材料によって完全に又は部分的に構成され、かつ、次の要件を満たすもの。
(a) 新品である場合と同程度の耐用年数及び同一又は類似の性能を有する。
(b) 新品である場合に付される保証書と類似の保証書が付されている。

「回収された材料」とは、一又は二以上の個々の部品の形態をとる材料であって、次の作業の結果として得られるものをいう。
(a) 使用済みの産品の個々の部品への分解。
(b) 適正な作動状態に改良するために必要な(a)に規定する部品の洗浄、検査、試験その他の加工。

【日EU EPA物品の貿易章第18条:再製造品】
(”Chapter [X] Trade in Goods, Article 18: Manufactured Goods”の仮訳)

日EU EPAにおいては、原産地規則章には何らの規定も見当たりませんので、再製造品に使用される部品への特別扱いはありません。また、完全生産品定義にも、「回収される部品」は含まれておりません。一方、物品の貿易章には「再製造品」規定が置かれています。外務省による条文、翻訳文が未公表であるため、EUのウェブサイトで公開されている協定の英文(2017年12月7日版)を基に筆者が仮訳し、骨子を書き下します。(万一、正式な批准版との間に齟齬があった場合には、ご容赦ねがいます。)

  • ● 再製造品(remanufactured goods)は、新品(new goods)として取り扱われる。
  • ● 自国の領域において流通され、又は転売されるものとして特定されることを求めることができる。
  • ● 本条の適用において、再製造品とは、第40.12項(ゴム製の空気タイヤ(更生・中古)等)、第84類から第90類(機械類、車両、光学機器等)又は第94.02項(医療用・理髪用のいす等)に分類される物品で、以下の要件を満たすものとする。
    ・ 使用済の産品(used goods)から得られた部品から完全に又は部分的に構成され、
    ・ 新品と同程度の耐用年数(life expectancy)及び同一の性能を有し(performs)、かつ、
    ・ 新品である場合に付される保証書(factory warranty)と類似の保証書が付されている。
2018年3月2日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

このページの先頭へ

注意)
日本輸出入者標準コードに関するお問合せは、ページ上部のメニューにある「コード関係お問合せ」をクリックして下さい。

一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会
〒104-0032 東京都中央区八丁堀 2-29-11 八重洲第五長岡ビル4階
コード管理センター TEL.(03)3555-6034 / FAX.(03)3555-6036
代表(庶務室) TEL.(03)3555-6031 / FAX.(03)3555-6032
Copyright©2004 JASTPRO All Rights Reserved.