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第二十五話USMCA協定:原産地規則編

米国の通商政策が大きく変わってきていることを実感します。米国は、自らの強いイニシアティブで開始したTPPからの離脱を始め、自由貿易協定の(良くも悪しくも)一つの見本であったNAFTA協定を破棄し、USMCA協定として「自由」の文言を取り去った名称で発効させようとしています。今回は、11月30日に署名された新NAFTAとも呼ばれるUSMCA協定の原産地規則の条文を紐解いてみたいと思います。

実は、本稿をウェブサイトに掲載する直前の11月30日に署名が行われたため、念のため署名以前にUSTRのウェブサイトに公開されていた協定条文の暫定版と署名後の最終版とを比較したところ、異なっている箇所が多々あり、あわてて本稿を書き直した次第です。我が国であれば、これ程の変更がありうる未定稿を公開することは躊躇するのでしょうが、米国はドライですね。

さて、紙面の都合上、今回を原産地規則編、次回を原産地手続編として、2回に分けて書き下ろしてみます。第6章の繊維章は内容の大半が原産地手続きに関するものなので、次回の原産地手続編で触れることにします。

USMCA協定は、第4章に原産地規則、第5章に原産地手続、第6章に繊維章を置いています。これら3章の構成はTPP11と類似しており、ほとんど同じ文言を使用した条文も多く見受けられますので、原産地規則に関する限り、交渉の土台として据えたのはTPP11の条文ではなかったかと推測します。TPP11との主な相違点は、USMCAが自動車ルールを別掲して、異常なほど詳細かつ政治的な背景を有する原産資格要件を自動車だけに適用することで、自動車関連産品に対して非常に厳格な原産性基準を課しているということです。具体的に申し上げれば、USMCAでは第87.01項から第87.08項までの自動車の品目別規則を付録(Appendix)において別建で規定していることに加え、当該付録は「自動車用産品の品目別原産地規則に関連する規定」として、第4‐B.1条から第4‐B.10条までの規定と第A‐1表から第G表を含んでいます。一方、独立章が与えられている繊維章には(TPP11と異なり)繊維・繊維製品に係る品目別規則が置かれておらず、原産地規則章の附属書4‐Bにおいて他の品目分野と一緒に規定されています。米国のセンシティブ品目の代表であった繊維分野がかすんでしまった感じがします。

それでは、規定の配置を見てみましょう。第4章は次のように構成されています。

第4章:原産地規則

本体規定:

第4.1条:定義
第4.2条:原産品
第4.3条:完全生産品
第4.4条:再製造品の生産に使用される回収された材料の取扱い
第4.5条:地域原産割合
第4.6条:生産に使用される材料の価額
第4.7条:材料の価額に対する更なる調整
第4.8条:中間材料
第4.9条:間接材料
第4.10条:自動車産品
第4.11条:累積
第4.12条:デミニミス(僅少の非原産材料)
第4.13条:代替性のある産品及び材料
第4.14条:附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料
第4.15条:小売用の包装材料及び包装容器
第4.16条:輸送用のこん包材料及びこん包容器
第4.17条:産品のセット、キット又は複合機械
第4.18条:通過及び積替え
第4.19条:原産資格を与えることとならない作業

附属書4‐A:

第4.12条(デミニミス規定)に対する例外

附属書4‐B:

品目別原産地規則(第1類〜第97類)(第87.01項〜第87.08項を除く。
付録:自動車用産品の品目別原産地規則に関連する規定

第4-B. 1条:定義
第4-B. 2条:自動車の品目別規則(第87.01項〜第87.08項
第4-B. 3条:乗用車、ライト・トラック、これらの部分品の域内原産割合
第4-B. 4条:ヘビー・トラック及び同部分品の域内原産割合
第4-B. 5条:アベレージング
第4-B. 6条:鉄鋼及びアルミニウム
第4-B. 7条:賃金割合
第4-B. 8条:経過規定
第4-B. 9条:レビュー及び経過措置
第4-B.10条:その他の車両の地域原産割合
第A.1表:乗用車及びライト・トラックの重要(Core)部分品
第A.2表:乗用車及びライト・トラックの部分品及びコンポーネンツ
第B表:乗用車及びライト・トラックの主要(Principal)部分品
第C表:乗用車及びライト・トラックの補完(Complementary)部分品
第D表:ヘビー・トラックの主要部分品
第E表:ヘビー・トラックの補助部分品
第F表:その他の車両の関税規定(Tariff provisions)リスト
第G表:その他の車両のコンポーネンツ及び材料のリスト

この構造から見て取れるのは、USMCAがターゲットにしているのは、自動車ということが分かります。読者の皆様が関心を寄せておられるのは、まず、「新NAFTA」として報道記事で頻繁に取り上げられている付加価値基準の閾値がこれまでの62.5%から75%に引き上げられるということと、NAFTA自動車ルールの代名詞でもあった「トレーシング方式」の付加価値計算方法がどのようになったかということでしょうか。更には、これが原産地規則かと思わせるような、極めて政治的色彩の強い「賃金割合条項」、「鉄鋼・アルミニウム条項」の存在も見逃せません。それでは、付加価値基準の閾値を中心として原産性基準を見てみましょう。

USMCAでは、自動車関連産品をその重要度に応じてグループ分けしております。第1順位が、乗用車、ライト・トラック、及びそれらの部分品。第2順位が、ヘビー・トラック及びその部分品。第3順位としてその他の自動車となります。まず、説明の都合上、これらのグループ分けを整理した上で閾値に焦点を当ててみたいと思います。

【自動車の完成品】

乗用車」とは、第8703.21号から第8703.90号の乗用車のうち、①ディーゼル車、ディーゼルエンジンとモーターとのハイブリッド車、②三輪、四輪のモーターサイクル、③公道走行に適さない全地形型車両(all-terrain vehicles)、④キャンピング・カー等の移動住宅車を除いたものです(付録第1条)。乗用車に対しては、ネットコスト方式の域内原産割合が発効時の66%からステージングにより3年後には75%に引き上げられます(付録第3条1)。

ライト・トラック」とは、第8704.21号又は第8704.31号のトラック(総重量5トン以下)で、専ら又は主にオフロード用に供されるものを除きます(付録第1条)。ライト・トラックに対しても、ネットコスト方式の域内原産割合が発効時の66%からステージングにより3年後には75%に引き上げられます(付録第3条1)。

ヘビー・トラック」とは、第8701.20号、第8704.22号、第8704.23号、第8704.32号又は第8704.90号、或いはこれらのシャーシ(第87.06項。ライト・トラックと同様、オフロード専用のものを除きます。)に限られます(付録第1条)。ヘビー・トラックに対しては、ネットコスト方式の域内原産割合が発効時の60%からステージングにより7年後に70%に引き上げられます(付録第4.1条)。乗用車、ライト・トラックに比較すれば、若干緩やかになっているといえましょう。

【自動車の部分品】

部分品は、重要度に応じて次のように呼称が変わります。

最重要(super-core)部品」とは、第A‐2表の第1欄に掲げられる7品目(エンジン、トランスミッション、車体及びシャーシ、車軸(axle)、懸架装置、ステアリング・システム及びアドバンス・バッテリー)で、付録第5.2条に従って域内原産割合を計算する際のアベレージングの適用において単一の部分品として取り扱われます(付録第1条)。また、乗用車及びライト・トラックが原産品となるためには、これらの最重要部品が原産品でなければなりません(付録第3.7条)。

ちなみに、第A‐2表は左側が第1欄、右側が第2欄となっており、左に最重要部品の7品目がリストアップされ、その右側に当該7品目を構成するコンポーネンツが列挙されています。ただし、右側の第2欄には特段の名称は与えられておりません。さらに厄介なことは、最重要部品である7品目にはHS番号が記載されておらず、名称も一般名称のみであることです。そこで、付録第3.7条には、実施を容易にするために各締約国に関税分類番号とか製品の記述の追加等を「統一規則(Uniform Regulations)」に規定すべく義務付けています。この部分は、暫定版では努力規定でしたが、義務規定に変わっています。

重要(core)部品」とは、第A‐1表に掲げられる乗用車及びライト・トラックに使用される部分品である17品目(ピストンエンジン等)で、これらの部分品に対しては、第8507.60号のリチウム・イオン蓄電池を除き(付録第3.3条)、ネットコスト方式の域内原産割合が66%からステージングにより3年後には75%に、取引価額方式で76%からステージングにより3年後に85%に引き上げられます(付録第3.2条)。

主要(principal)部品」とは、第B表に掲げられる乗用車及びライト・トラックに使用される部分品である38品目で、ネットコスト方式の域内原産割合が62.5%からステージングにより3年後に70%に、取引価額方式で72.5%からステージングにより3年後に80%に引き上げられます。ただし、附属書4‐Bの品目別規則に規定される関税分類変更基準を満たす場合には、原産部品として認められます(付録第3.4条)が、附属書4‐Bの品目別規則には第87.01項から第87.08項が含まれておりませんので、当該関税分類変更基準は主要部品の中でも第84類及び第85類の部品と第9401.20号の自動車用シートにのみ適用されることになります。第D表にはヘビー・トラックに使用される35品目の主要部品が掲げられ、ネットコスト方式の域内原産割合が60%からステージングにより7年後に70%に、取引価額方式で70%からステージングにより7年後に80%に引き上げられます(付録第4.2条)。この域内原産割合は、ヘビー・トラックに使用される第84.07項及び第84.08項のエンジンの部分品、第8708.40号のギアボックスの部分品又は第8708.99号のシャーシについても適用されます(付録第4.4条)。

補完(complementary)部品」とは、第C表に掲げられる乗用車及びライト・トラックに使用される部分品である27品目で、ネットコスト方式の域内原産割合が62%からステージングにより3年後に65%に、取引価額方式で72%からステージングにより3年後に75%に引き上げられます。ただし、附属書4‐Bの品目別規則に規定される関税分類変更基準を満たす場合には、原産部品として認められます(付録第3.5条)。第E表に掲げられるヘビー・トラックに使用される部分品である15品目は、ネットコスト方式の域内原産割合が50%からステージングにより7年後に60%に、取引価額方式で60%からステージングにより7年後に70%に引き上げられます(付録第4.3条)。

次に、主要規定を見てみましょう。

第4.2条:原産品(TPP11と同様に「地域原産」の概念を採用。米・加・墨を一地域として原産性判断

(a)から(d)のいずれかの原産性基準を満たし、積送基準等その他の要件を満たすものを原産品とする。
(a)完全生産品、
(b)品目別規則、
(c)原産品のみから生産される産品、又は
(d)第61類〜第63類の産品を除き、

(i)域内で生産され、
(ii)①部品と産品が同一の号・項に分類されるために関税分類変更を満たさない場合、又は
②HS通則2(a)により未組立又は分解された物品(完成品扱い)として輸入され、かつ
(iii)累積規定を適用した場合のRVCが取引価額方式で60%以上又はネットコスト方式で50%以上の産品、及び

その他の要件(積送基準、証明等)を満たす物品
((d)(iii)の規定は、①主に機械類で製品と同一の号又は項に分類される部品を組み立てて製品にした(parts-to-parts issue)場合、又は②部品をキットとして箱詰めしたものが通則2(a)の規定により製品扱いされて輸入される場合、域内生産された産品が付加価値基準を満たすことによって原産性を与えられる救済条項。)

第4.3条:完全生産品(TPP11の完全生産品定義とほぼ同じ

第4.4条:再製造品の生産に使用される回収部品の取扱い(TPP11と同じ

第4.5条:地域原産割合

1.取引価額方式又は純費用方式のいずれかを輸入者、輸出者、生産者が選択
2.RVCの取引価額方式:(TV-VNM)/TV x 100;
3.RVCの純費用方式:(NC-VNM)/NC x 100
4.産品の生産において生産者によって使用された非原産材料の価額は、RVCの算定において、引き続き当該産品の生産に使用される原産材料の生産に使用された非原産材料の価額を含めない。(ロールアップの容認
5.RVCの要件充足に関し、域内で行われた(a)非原産材料の加工に係る価額、(b)非原産材料の生産に使用された原産材料の価額は、原産割合の一部として参入することができる。(任意トレーシングを容認する完全累積概念の確認
6.輸入者、輸出者、生産者は、品目別規則において取引価額方式が規定されていない場合には純費用方式のみによってRVCを算定する。
7.輸入者、輸出者、生産者が取引価額方式でRVCを算定し、後に当局の確認手続において、輸入者、輸出者、生産者に対して産品の取引価額又は生産に使用された材料の価額を関税評価協定第1条に基づき修正又は否認されるべきことを通知した場合、当該輸入者、輸出者、生産者は、純費用方式によってRVCを算定することができる。
8.産品の純費用を算定するに当たって、当該産品の生産者は以下を行うことができる。ただし、全ての費用の割当ては統一規則に定める費用の合理的な割当てに関する規定に整合的でなければならない。(以下の(a)から(c)は、TPPとほぼ同じ。
(a)生産者によって生産されるすべての産品に関連して生ずる総費用(total cost)を算定し、当該全ての産品の総費用に含まれる販売促進、マーケティング及びアフターサービスに係る費用、使用料、輸送費及びこん包費並びに不当な利子を減じた後に、これにより得られる当該全ての産品の純費用を当該産品に合理的に割り当てる。
(b)生産者によって生産されるすべての産品に関連して生ずる総費用を算定し、当該総費用を当該産品に合理的に割り当てた後に、販売促進、マーケティング及びアフターサービスに係る費用、使用料、輸送費及びこん包費並びに不当な利子であって、当該総費用のうち当該産品に割り当てられる部分を減じる。
(c)当該産品に関連して生じた総費用の一部をなす各費用について、それらの総計に販売促進、マーケティング及びアフターサービスに係る費用、使用料、輸送費及びこん包費並びに不当な利子が含まれることとならないよう、当該各費用を合理的に割り当てる。

今回は、前述のとおり自動車を中心に取り上げますので、地域原産割合に関する附属書4‐B付録の各規定を拾い上げて、補足することにします。まず、付録第4.5条で、「ロールアップ方式の採用」と「任意トレーシングを容認する完全累積概念」が明確に規定されたことは注目に値します。付録第3.6条において、乗用車、ライト・トラック(完成車)、第A‐1表の重要部品、第B表の主要部品、第C表の補完部品に対しては、域内原産割合の算定に当たって付録第4.5条から第4.8条及び同第5条(アベレージング) が適用されることが規定されており、これらの重要品目に対してもロールアップと任意トレーシングが適用されることになります。例外は、最重要部品7品目で、域内原産割合を算定する際の非原産材料の価額の決定に、別建ての決定方法を定めています。

それでは、義務的トレーシングはどの品目に適用されるのでしょうか。USMCA署名前の暫定版には、付録第10.3条において、以下の明快な規定が置かれていました。

生産者によって産品の生産に使用された非原産材料の価額は、域外から輸入され、域内において産品の生産に使用されるか、産品の材料の生産に使用される非原産材料を域内で初めて受領した時点において、第4.6条に従って決定された表Fに列挙される非原産材料の総額とする。

しかしながら、署名後の最終版にはこの規定は削除されており、類似規定も見当たりません。したがって、筆者の個人的な見解ですが、USMCA原産地規則においては、義務的トレーシングは課されない代わりに、原産割合を高めるために任意でトレーシングを実施することを容認していると理解しています。

第4.6条:生産に使用される材料の価額(TPP11と全く同じ

(a)産品の生産者によって輸入された材料は、当該材料の輸入時の取引価額(国際輸送に要する費用を含む)とする。(すなわち、CIF
(b)産品の生産地において調達された材料は、(i)生産者の所在地において生産者が支払った又は支払われるべき価格、(ii)サブパラ(a)の輸入材料として決定された額、(iii)確認可能な最初に支払われた又は支払われるべき価格
(c)生産者が自ら生産する材料(内製材料)は、(i)当該材料の生産に要する全ての費用で一般経費を含む、及び(ii)通常の取引において付加される利得の相当額又は価額を決定しようとしている当該材料と同一の区分若しくは種類の産品の販売において通常反映される利得と等しい額

第4.7条:材料の価額に対する更なる調整(TPP第3.8条の1(原産材料の価額の調整)を削除した内容とほぼ同じ

1.非原産材料又は原産地不明の材料について、その価額から次の経費を控除することができる。
(a)産品の生産者の所在地まで当該非原産材料又は原産地不明の材料を輸送するために要する運賃、保険料、こん包費その他の全ての費用
(b)一又は二以上の締約国の領域において支払われる当該非原産材料又は原産地部名の材料に対する関税、内国税及び通関手数料(免除され、若しくは払い戻される関税及び内国税又は払戻しその他の方法により回収することができる関税及び内国税(支払われた又は支払われるべき関税又は内国税からの控除の額を含む。)を除く。)
(c)産品の生産における当該非原産材料又は原産地不明の材料の使用から生ずる無駄になった部分及び使い損じた部分の材料の費用(再利用可能なくず又は副産物の価額を差し引いたものをいう。)
2.1に規定する費用若しくは経費が不明である場合又はその調整額に関する書面の証拠がない場合には、当該費用又は経費についての価額の調整は、認められない。

第4.8条:中間材料(TPP11には存在しない。日墨協定第26条に類似規定あり。

第4.5条(地域原産割合)第2項又は第3項により地域原産割合を算定するために、産品の生産に使用される自己生産材料(付録G表に記載されるコンポーネンツを除く)は、当該産品の生産者によって中間材料として指定されうる。ただし、当該中間材料に地域原産割合要件が課せられる場合、当該生産者は、当該中間材料の生産に使用される別の自己生産材料で地域原産割合要件が課されるものを中間材料として指定することはできない。

第4.9条:間接材料(TPP11とほぼ同じ

第4.10条:自動車産品

附属書4‐B付録は、自動車産品に適用される追加規定を含む。

第4.11条:累積(TPPとほぼ同じ規定振りで完全累積を確認。第1項では「地域原産」の確認、第2項ではモノの累積の確認、第3項では生産行為の累積を確認。

第4.12条:デミニミス(僅少の非原産材料)

1.附属書4-A(デミニミス規定の例外)に定める場合を除き、産品の生産において、関税分類変更基準を満たさない全ての非原産材料の価額が、
(a)国際輸送に要する費用を除いた産品の取引価額、又は
(b)産品の総費用の10%以下であり、その他の全ての要件を満たす場合には当該産品を原産品とする。
2.関税分類変更基準と地域原産割合要件が併課される場合、地域原産割合の算定上、非原産材料は非原産材料として算定する。
3.地域原産割合要件の対象となる産品は、全ての非原産材料の価額の総額が当該産品の取引価額(上記第1項に従って調整したもの)の10%以下である場合、当該要件を満たすことを要しない。
4.繊維及び繊維製品に対しては、第1項に代わって第6.1条第2項から第6.1条第3項の規定が適用される。

第4.13条:代替性のある産品及び材料(TPP11とほぼ同じ趣旨を規定。しかしながら、USMCAにおいてはGAAPの他に「産品が生産又は輸出された締約国において認められる在庫管理方式」の使用が容認されている。

第4.14条:付属品、予備部品、工具又は解説資料若しくはその他の資料(TPP11とほぼ同じ

第4.15条:小売用の包装材料及び包装容器(TPP11と全く同じ

第4.16条:輸送用のこん包材料及びこん包容器(TPP11と全く同じ

第4.17条:産品のセット、キット又は複合品

1.附属書4‐B(品目別原産地規則)に別段の定めがある場合を除き、HS通則3によってセット分類される産品は、セットを構成する各物品が原産品であり、当該セット及び各構成物品がその他の要件を満たしている場合に原産品と認める。
2.上記1にかかわらず、HS通則3によってセット分類される産品は、セットを構成する非原産の物品の価額がセットの価額の10%を超えない場合には原産品とする。
3.上記2の適用において、セットを構成する非原産の物品の価額は非原産材料の価額、セットの価額は産品の価額と同様な方法で行う。
4.繊維製品に対しては、第6.1.4条から第6.1.5条を適用する。

第4.18条:通過及び積替え(修辞上の修正を除いてTPP11とほぼ同じ。原産品は他の締約国に直送される限り原産性を維持する。第三国を経由する場合、原産性を維持する要件は、①第三国税関監督下での管理、②積卸し、蔵置、ラベル貼付、その他貨物を良好な状態に保存するためのもの等の作業に限って容認

第4.19条:原産資格を与えることとならない作業(TPP11には存在しない規定

産品は、次の理由のみによって原産品とされることはない。
(a)産品の特性を実質的に変更しない水又は他の物質による希釈
(b)迂回を目的として証拠の優越を基に立証される生産又は価格設定

最後に、「賃金割合条項」と「鉄鋼・アルミニウム条項」を説明して本稿を終えることにします。

賃金割合条項」は、かなり複雑な規定となっています。まず、乗用車が原産品となるためには、自動車生産者は当該生産が「賃金割合(Labor Value Content)」要件を充足したことを証明しなければなりません。乗用車に対する要件は、2020年1月1日か本協定の発効日のどちらか遅いにおいて、30%となり(内訳として、高賃金材料及び製造支出として少なくとも15%ポイント、高賃金技術支出として10%ポイントを超えず、高賃金組立支出として5%ポイントを超えない額)、最終的に2023年1月1日か発効日から3年経過した日おいて、40%(内訳として、高賃金材料及び製造支出として少なくとも25%ポイント、高賃金技術支出として10%ポイントを超えず、高賃金組立支出として5%ポイントを超えない額)となります(付録第7.1条)。ライト・トラックヘビー・トラックについては、ステージングの定めがなく、発効日から45%(内訳として、高賃金材料及び製造支出として少なくとも30%ポイント、高賃金技術支出として10%ポイントを超えず、高賃金組立支出として5%ポイントを超えない額)の賃金割合を達成しない限り当該トラックは原産品となりません(付録第7.2条)。

次に、「高賃金」要件に入りますと、「高賃金材料及び製造支出」は、北米地域に立地し、生産賃金率が少なくとも時給16米ドルの工場・施設において生産された部品・材料を購入した年間購買価額(Annual Purchase Value)と、生産者の選択により、自動車組立工場・施設における労働経費の、自動車のネットコスト又は自動車工場の組立に係る年間購買総価額(生産者の選択により、当該工場・施設における労働経費を含む。)に対する百分率とされています。「高賃金技術支出」は、調査研究(R&D)又は情報技術(IT)用の賃金の北米地域における自動車生産者による年間支出額の、北米地域における生産賃金に係る自動車生産者による総支出に対する百分率となります。「高賃金組立支出」は、5%ポイントを超えない1回限りのクレジットで、自動車生産者が、北米地域において少なくとも時給16米ドルの平均生産賃金を伴うエンジン、トランスミッション又はアドバンス・バッテリーの組立工場を保持し、或いはそのような工場と長期契約を締結していることを証明した場合に可能になります(付録第7.3条)。

賃金割合要件の算定には、域内原産割合で使用するアベレージングの手法を使用することができます(付録第7.4条及び第7.5条)。さらに、2027年1月1日か本協定の発効日から7年後までに、自動車生産者が、30%ポイント超の高賃金材料及び製造支出の増額によってヘビー・トラックの賃金割合において45%超となることを証明した場合には、当該生産者は、30%ポイントを超えた分のポイントを付録第4.1条の域内原産割合にクレジットとして充当することができます(ただし、閾値が60%を下回らない場合にかぎります。)(付録第7.6条)。

鉄鋼・アルミニウム条項」は、乗用車、ライト・トラック又はヘビー・トラックが原産品であるためには、①自動車生産者の北米地域における鉄鋼購買額、及び②自動車生産者の北米地域におけるアルミニウム購買額の少なくとも70%が原産品でなければならないとの規定です。

2018年12月11日 掲載
  • ※1アベレージング規定はTPP11では第3.7条(準費用)第3項及び第4項として存在し、USMCAの付録第5条のアベレージングとほぼ同じ規定振りとなっています。相違する点は、対象となる品目が異なっていることと、TPP11第3.7条第3項(c)において「締約国の領域において生産される同一のモデルラインの自動車」としているところがUSMCAでは「締約国の領域において生産される同一のモデルライン又は同一の車種の自動車」と微修正があるところに過ぎません。
  • ※2その際、非原産材料の価額は自動車生産者の選択により(a)当該部品の生産に使用された全ての非原産材料の価額、又は(b)当該部品の生産に使用された第A‐2表第2欄に列挙されるコンポーネンツであって非原産のものの価額、のどちらかとすることができます(付録第3.8条)。また、非原産材料を計算する別の方法として、生産者の選択により、同表第1欄の全ての部分品を単一の部分品として取り扱い、同欄の各部分品のネットコストの総額を使用し、生産者の選択により、非原産材料の価額を(a)同第1欄の部分品の生産に使用された全ての非原産材料の価額の総額、又は(b)同第1欄の部分品の生産に使用された同第2欄のコンポーネンツのうち非原産となったものの価額の総額とすることもできます(第3.9条)。
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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