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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第三十三話EUメルコスールFTA原産地規則

今回は6月28日付のロイターが伝えたEU・メルコスールFTAの同日付大筋合意に関連したお話しです。同記事は以下のように伝えています。

アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイが参加するメルコスールとEUは2000年にFTA交渉を開始したが、EUが牛肉の輸入急増のほか、メルコスールが自動車市場など一部工業製品の市場開放に消極的なことに懸念を示していたことで交渉は難航していた。
ただトランプ米大統領の政策でEUと米国との間の貿易交渉が凍結状態になったことを受け、EUは交渉を加速化。欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)は今月に入り、メルコスールとのFTA締結が最優先事項と述べていた。

EUメルコスールFTAは、関税同盟間で締結されたFTAとして、どのように原産品を定義するのか関心をお持ちの方も多いと思います。特にEUはガット第24条の関税同盟であるのに対し、メルコスールは授権条項によって設立された関税同盟ですので、EUのような「完全な」関税同盟とは異なります。

2019年6月28日付、欧州委員会のプレスリリース「EU and Mercosur reach agreement on trade」によりますと、EUが直近に締結したEUカナダFTA、日EU・EPAと比較しても、EU企業が裨益する関税削減額は最大の40億ユーロを超えるものとして、大きな期待を寄せているようです。何を基準にするかによりますが、現時点においては、物品・サービスの貿易額、GDP総額では、日EU・EPAが依然として最大のEPAであることは間違いないようです。

協定 域内総人口 物品貿易 サービス貿易 EU企業の
関税上の利益
GDP総額
EUカナダ 5億50百万人 720億ユーロ 350億ユーロ 6億ユーロ 18兆ユーロ
日EU・EPA 6億39百万人 1350億ユーロ 530億ユーロ 10億ユーロ 21兆ユーロ
EUメルコスール 7億73百万人 880億ユーロ 340億ユーロ 40億ユーロ超 19兆ユーロ

(出典:欧州委員会)

さて、提携先の(在ブリュッセル)法律事務所から本協定条文の未定稿を入手したので、原産地規則について概要を情報共有したいと思います(訳文が筆者の仮訳であることと、条文自体が今後修正され得ることを申し添えます。)。骨子は、以下のとおりです。

基本構造は、「関税同盟」対「関税同盟」のバイFTA。
原産性判断基準は、標準的な3基準(完全生産品、原産材料のみから生産される産品及び品目別規則を満たす産品)。ただし、原産品の領域的範囲は、EU原産かメルコスール原産。
付加価値基準は、工場渡し価額(ex works)をベースとしたしたMaxNOMのみ。
加工工程基準は、化学反応、混合及び調合、精製、粒径の変更、標準物質の生産、異性体分離、生物工学的工程を採用。
関税同盟を一単位とした「国原産」の原則(この場合はEUかメルコスール)に基づき、モノの累積を認める(部分累積)。
デミニミス(許容限度)規定は、品目別規則を満たさない非原産材料が産品の工場渡し価額の10%を超えない場合(繊維製品は注釈6、7に別途規定。原則として、生産に使用された基本的な紡織用繊維の重量の10%以下)に適用。
輸出者(生産者は含まれず。)による自己申告制度を採用。EUにおいては、輸出者はREXシステムによる登録輸出者でなければならない。
原産地に関する申告(Statement on Origin)は、有効期限を1年とし、インボイス、デリバリー・ノート又はその他の商業上の文書に各国の公用語で記載される。申告書には原則として輸出者の署名が必要。申告書は輸出時又は輸出後2年以内に作成される。
メルコスールの締約国については、経過措置として、「原産地証明書(Certificate of Origin)」(第三者証明)が協定発効から3年間に限って発給され得る(2年間の延長可)。

原産地規則に関する附属書

【A節 - 原産地規則】

第1条(定義)

第2条(一般的要件)

バイ協定の形式でEU原産品とメルコスール原産品とが存在する。原産性判断のための3基準及びロールアップ原則を規定する。

第3条(二国間累積)

モノの累積を規定。ただし、第6条(十分な加工とはみなされない作業又は加工)の作業又は加工を超える場合に限る。

第4条(完全生産品)

完全生産品の領域的な範囲は、それぞれEUとメルコスール。(したがって、アルゼンチンで生まれた牛がウルグアイで飼育され、屠畜された場合、牛肉はメルコスール完全生産品となります。)

第5条(許容限度)

非原産材料の総額が産品の工場渡し価額の10%未満であって、かつ、非原産材料について定められる最大許容額・重量を超えないことを条件に、品目別規則の要件を満たさない場合であっても原産資格を認める。本規定は、繊維製品(第50類〜第63類)には適用されない(別添1注釈6、7により、使用された基本的繊維材料の総重量の10%以下となること等が適用される。)。

第6条(十分な加工とはみなされない作業又は加工)

日EUと類似した規定振り。日EUと同様、「単純」な加工の定義も置かれている。

第7条(原産品としての資格の単位)

第8条(小売用の包装材料、輸送用のこん包材料及びこん包容器)

第9条(附属品、予備部品及び工具)

第10条(会計の分離)

第11条(セット)

HS通則3によってセットと認められる産品は、構成要素がすべて原産資格を有する場合には原産資格を有する。構成要素に非原産品が含まれる場合には、当該非原産の構成要素の価額がセットの工場渡し価額の15%を超えないことを条件に原産資格を認める。

第12条(中立的な要素)

中立的な要素として以下の4点が限定列挙されている。(a)エネルギー及び燃料、(b)プラント及び設備、(c)機械及び工具、(d)最終製品に組み込まれない又は組み込まれることを意図しない産品

第13条(域内一貫生産の原則)

第14条(積送要件

不改変の原則、輸入国の要求によるラベルの貼付等の許容、税関監督下での蔵置・仕分けの許容、不改変を証明する証拠の提出要求等を規定する。

第15条(展示)

第三国での展示に係る要件を規定する。

【B節 - 原産地手続き】

第16条(一般的要件)

原産地に関する申告の提出による関税上の特恵待遇の要求を規定する。

第17条(原産地に関する申告作成に係る要件)

輸出者による自己申告を採用(生産者は不可)。申告書は、インボイス、デリバリー・ノート又はその他の商業上の文書に各国の公用語で記載。申告書には原則として輸出者の署名が必要。申告書は輸出時又は輸出後2年以内に作成される。輸入国税関又は権限ある当局の要請があった時には、輸出者は、本申告書及び原産性を証明する証拠を提出する。

第18条(原産地に関する申告の期限)

申告書は作成の日から12ヵ月間有効であり、その期間内に輸入国税関に提出される。

第19条(分割輸入)

HS通則2(a)の適用により分解され、又は未組立の貨物が分割して輸入される場合には、単一の原産地に関する申告が最初の輸入時に提出される。

第20条(原産地に関する申告の免除)

個人から個人に発送される荷物又は旅行者のラゲッジは、原産品とみなされる(自己申告書の作成不要)。

第21条(補足文書)

産品の原産性を証明するための文書は、以下を含む。

(a)輸出者又は供給者によって行われた当該工程の直接的な証拠、例えば、当該者の説明書又は部内の帳簿
(b)国内法に従って使用された文書で、生産に使用された材料の原産性を証明するもの
(c)国内法に従って使用された文書で、EU又はメルコスール域内で作成され又は発給された材料に加えられた作業又は加工を証明するもの
(d)本附属書に従って作成された原産地に関する申告で、使用された材料の原産性を証明するもの

第22条(文書の保管義務)

自己申告を行う輸出者は、少なくとも3年間、原産地に関する申告及び原産性を証明する文書を保管しなければならない。

第23条(矛盾及び形式上の誤り)

第24条(税関当局と権限ある政府機関との協力)

原産地に関する申告の真正性及び正確性を検証するために、税関当局又は権限ある当局は相互に支援を行う。関税犯則の防止、調査等のために、税関分野での相互行政支援に関する附属書は当局間の協力を規定する。その中には、支援を行う締約国(輸出国)の同意と適切な条件に従った、締約国(輸入国)の政府職員の他の締約国(輸出国)への臨場を含む。

第25条(原産地に関する申告の確認)

原産地に関する申告に関する確認は、ランダム抽出又は輸入国税関又は権限ある当局が申告書類の真正性、産品の原産資格又はその他の要件の具備に対して合理的な疑いを持った場合に実施される。確認は輸出締約国の税関又は権限ある当局によって実施される。確認要請の日から10ヵ月以内に回答がない場合、又は提供された情報が不十分である場合、特恵待遇を否認する。

第26条(協議)

輸入締約国の税関又は権限ある当局が輸出締約国からの前条の回答内容と異なる判断を行う場合、輸入締約国は輸出締約国に対し当該回答を受領した日から60日以内にその旨を回答しなければならない。いずれかの締約国の要請があれば、当該回答受領後90日以内に協議を行う。当該協議で意見の一致がない場合には、税関、貿易の円滑化及び原産地規則に関する特別委員会での協議に付される。輸入締約国は、特別委員会での協議後、輸入者に弁明の機会を与えた後に十分な正当性に基づいて決定を行うことができる。当該決定は輸出国に通知される。

第27条(行政上の措置及び制裁)

【C節 - 最終規定】

第28条(セイタ及びメリリャへの適用)

第29条(本附属書の改正)

第30条(税関、貿易の円滑化及び原産地規則に関する特別委員会)

第31条(輸送中又は蔵置中の貨物に係る経過規定)

第32条(説明のための注釈)

第33条(関税割当に使用される様式の事前送付)

別添 1

品目別原産地規則の注釈

注釈1一般原則
注釈2別添2(品目別原産地規則)の構造
注釈3別添2(品目別原産地規則)の適用
注釈4非原産材料の最大許容額の計算
注釈5別添2(品目別原産地規則)第11部で使用される用語の定義
注釈62以上の基本的繊維材料を含む産品に適用される許容限度
注釈7特定の繊維製品に適用される許容限度
注釈8別添2(品目別原産地規則)第6部から第7部に規定される加工の定義
注釈9農産品

別添 2

品目別原産地規則

別添 3

原産地に関する申告

別添 4

経過措置
メルコスールからEUへの輸出に関し、3年間を限度として原産地に関する申告に代わり「原産地証明書」を代替文書として認める(2年間の延長可)。

別添 5

管理上の誤りへの対応

別添 6

アンドラ公国に関する共同宣言、サンマリノ共和国に関する共同宣言

2019年8月14日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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