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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第三十七話日EU・EPA原産地手続に関するガイダンス・ガイドラインの新設・改訂

仕事納めまであと2週間を切った12月16日、日本時間の夕刻、日欧同日にガイダンス・ガイドラインの新設、更新が双方の税関当局のウェブサイトで公開されました。今回新設されたガイダンスはEU側の「原産地に関する申告に係るEU日本EPAガイダンス」の1本のみで、改訂版として公表されたのが日本側の「日EU・EPA 自己申告及び確認の手引き」とEU側の「特恵の要求、確認及び否認」の2本となります。これらを読んでみると、同じ表現振りの記述が多くなっており、日欧において協定条文の統一的な解釈を国内法段階においても共有し、共通の原産地手続きの取扱いを志向したものであることが見てとれます。しかも、EU側の当初ガイダンスにおいて「書きすぎ」ていたと思われる部分が削除、修文されており、こうした変更も日本側からの強い働きかけがあったことを物語っているように思います。

さらに特筆すべきは、協定附属書3‐D注2に記載されている輸出者参照番号の取扱いです。附属書には「輸出者が番号を割り当てられていない場合には、この欄は、空欄とすることができる」とされていたものが、「場所及び日付」の欄に「輸出者の住所」を記載することとなった点です。同附属書注5では、「場所及び日付は、これらの情報が文書自体に含まれる場合には、省略することができる」としていますが、今後、法人番号を持たない輸出者(すなわち、参照番号が空欄の輸出者)は商業上の文書に場所・日付が記載されていたとしても、あらためて住所を記載することが求められます。ここで興味深いのは、その理由として「輸出者を特定できない」としていることです。我が国においては国税庁から法人番号を取得していない個人事業者が無番号者の代表例になりますが、輸出者を特定できないという理由には少し違和感があります。今回の参照番号部分の改訂は、欧州側のREX制度に起因するのかもしれません。REX制度自体が原産地非違を繰り返したり、関税犯則で罰せられた者をREX登録から外すことによって特恵貿易の輸出自己申告資格をはく奪することにしているため、REX番号を持たない者が自己申告を行うことがそもそもありえないという認識なのかもしれません。そのため、もし欧州の輸入者が法人番号を空欄にした我が国の輸出者自己申告を拒絶したとすれば、それは「身に着いた習慣」とでもいうようなものなのでしょう。

このように、単なる自国民向けのガイダンス・ガイドラインの枠を一歩踏み出した日欧共通通達を策定しようとしたのですから、双方の税関当局が調整に難航したことは想像に難くありません。日EU原産地規則・税関関連事項に関する専門委員会の採択事項(6月26日)では「ガイダンス・ガイドラインの新設、更改は本年10月1日まで」としていたので、この時期にようやく公表されたという事実そのものが、調整の困難さを現しているようです。

ちなみに、当該採択文書の別添IIにおける各締約国の「措置及び予定表」によれば、両締約国は以下を実施することとされていました(日EU双方がそれぞれ実施主体だけを別にして同じ文章を掲載していたので、実施主体をまとめて一つの文章として引用しています。)。

ガイダンス・ガイドラインの策定

以下に記載される問題に関し、2019年10月1日までに完遂すべくEU及び日本国で継続する共同作業に基づき、日本国税関及び租税・関税同盟総局は、新たなガイドライン又は既存のガイドラインの改訂版を可及的速やかに公開する。日本国税関及び租税・関税同盟総局は、新たなガイドライン又は既存のガイドラインの改訂版の公開前に、租税・関税同盟総局及び日本国税関に協議する。

●生産者によって作成された原産地に関する申告の適切な取扱い
●「その他の商業書類」の例示の提供
●第三国で発出されたインボイスと共に使用される原産地に関する申告の適切な取扱い

新設されたEU側の「原産地に関する申告に係るEU日本EPAガイダンス」と改訂された日本側の「日EU・EPA 自己申告及び確認の手引き」の別添には、今回の改訂を象徴するような文書として「EU税制関税同盟総局と日本税関の間で合意した共通文書」が全く同じ内容で(それぞれ英文、和文で)掲載されています。我が国の輸出者でEU税関の不統一な取扱いに悩まされていた方、又はEUの輸入者の勝手な解釈で正当であるはずの書面の受領を拒絶されていた方等は、該当する部分(英文)を先方税関職員又は輸入者に提示することで解決の一助になるかもしれません。特に、EUにおいてはこれらのガイダンスを加盟国税関当局に入念に周知するはずなので、1周年を迎える日EU・EPAが円滑に実施されることが期待されます。

それでは、共通文書の発出によってより明確化された「輸出者」の解釈とQ&Aについて、筆者の理解した内容を簡単に述べてみたいと思います。まず、輸出者・生産者による自己申告において、これまで輸出者というと我が国の関税法上の輸出者をイメージしがちでしたが、今般、日EU・EPA原産地規則においては「輸出者とは原産地申告を行う者」とのニュアンスを強く出しています。したがって、「原産地申告を行う者」であって、協定上の責任としての①いずれかの締約国に所在し、法的義務を履行すること、②原産品を輸出する者・生産者であること、③原産品を正確に特定すること、及び④書類の保管義務を負う旨を明記しています。

「EU税制関税同盟総局と日本税関の間で合意した共通文書」(抜粋)

2. 輸出者

a) 日本又はEUのいずれかに所在し、所在する締約国で課される法的義務を履行する者である。
b) 原産品を輸出し、又は生産する者(原産地に関する申告を作成する者に限る)である。
c) 仕入書その他の商業上の文書に記載された産品のうち原産品を正確に特定することについて責任を負う者である。
d) 原産地に関する申告の写し(及び産品の原産性に関連する他の全ての記録)を少なくとも4年間保管しなければならない。

その後にQ&Aが続きます。Q&Aはそのまま全文引用し、重要と思われる部分を青字で、取扱いの変更があった部分を赤字で表記しています。筆者の解釈は括弧書きとして矢印(⇒)の後にイタリック体で述べています。

Q: 誰が協定上の「輸出者」(以下「輸出者」)となり得ますか?
A: 「輸出者」は、日EU・EPA に定める義務を履行できる者である限り、産品の輸出に関与し、原産地に関する申告を作成するいかなる者(例えば、生産者や商社など)がなり得ます。また当該産品の輸出申告を行う者である必要はありません。(⇒ 輸出者の範囲を明確化しています。
Q: 原産地に関する申告にはどのような文書を使うことができますか?
サブQ1: 「輸出者」は、原産地に関する申告を作成するにあたり、他者が作成した文書を使うことができますか?
A:

日EU・EPA では原産地に関する申告は「輸出者」により作成されることを義務づけていますが、当該申告の作成に使用される商業上の文書を発行する者に関する明確な要件は一切規定されていません。
たとえ原産地に関する申告が他者が作成した文書上に作成されたとしても、産品に関する詳細な説明を提供する義務は「輸出者」が負うことになります。
したがって、生産者と商社(輸出事業者)の双方が輸出締約国内に所在していれば、日EU・EPA では以下のシナリオが適用されることが妨げられることはありません。

「輸出者」となる生産者が、産品を輸出していなくとも、自身が作成する文書上に原産地に関する申告を作成すること。
「輸出者」となる商社が、生産者からの情報に基づき、自身が作成する文書上に原産地に関する申告を作成すること。
「輸出者」となる生産者が、産品を輸出していなくとも、商社が作成する文書上に原産地に関する申告を作成すること。
「輸出者」となる商社が、生産者からの情報に基づき、生産者が作成する文書上に原産地に関する申告を作成すること。

ただし、3番目と4番目のシナリオでは、原産地に関する申告を作成した「輸出者」が商業上の書類を発行した者でないことを書類上に明記することが必要です。(⇒ どのように明記するかについては、サブQ3の回答を参照して下さい。輸出者参照番号が割り当てられていない、すなわち、「輸出者」を特定できない場合では、「輸出者」は「場所及び日付」の欄に住所を記載して下さい。(⇒ 協定附属書3-D(原産地に関する申告文)では、「場所及び日付は、これらの情報が文書自体に含まれる場合には、省略することができる」としていますが、今般、輸出者参照番号を空欄とした輸出者は、「場所及び日付」の欄に「住所」の記載が必要となります。

サブQ2: 第三国で作成された仕入書上に原産地に関する申告を記載することはできますか?
A:

「輸出者(生産者または貿易事業者)」が輸出締約国に所在する一方で仕入書を発行する貿易事業者が第三国に設立されている場合、第三国の貿易事業者が発行する文書上に「輸出者」が原産地に関する申告を作成することは想定されていません。この場合、原産地に関する申告は、輸出締約国に所在する「輸出者」(サブQ1で記載したシナリオのいずれかに該当するシナリオで、第三国に設立された貿易事業者ではなく、輸出締約国に所在する生産者や貿易事業者)により発行された商業上の文書(例えば、デリバリーノート)に記載されなければなりません。(⇒ 結果として、第三国インボイスと「輸出者」により発行された商業上の文書(デリバリーノート等)の2本建てとなります。
また、「輸出者」(サブQ1で記載したシナリオのうちいずれかのシナリオでの生産者又は貿易事業者)によって発行された文書上に作成された原産地に関する申告に基づく関税上の特恵待遇の要求は、仕入書が第三国において発行されたことのみを理由として、否認されないことに留意して下さい。

サブQ3: 原産地に関する申告に使用される「その他の商業上の文書」とは何ですか?
A:

何が「商業上の文書」であるのか協定上の定義はありませんが、商業取引が記録された書類と考えられます。
したがって、「商業上の文書」は、仕入書そのもの以外に、プロフォーマインボイス、船積書類(パッキングリスト、デリバリーノート)等の各種文書が含まれます。
原産地に関する申告に用いられる仕入書その他の商業上の文書には、原産品について特定するのに十分詳細な説明があることのみが協定上の要件として求められます。なお、原産品ではない他の産品が同仕入書その他の商業上の文書に含まれる場合には、原産品と明確に区別して下さい。原産地に関する申告は、以下の条件を満たせば、仕入書その他の商業上の文書以外の別紙(例えば、白紙もしくは企業名のレターヘッド入りの用紙)に作成することができます。

仕入書その他の商業上の文書から当該別紙との関連が明らかな場合、 または
当該別紙から仕入書その他の商業上の文書との関連が明らかな場合

このような場合には、当該別紙を仕入書やその他の商業上の文書の一部とみなすことができます。上記の取扱いについてはサブQ1への回答に記載された4つのシナリオにも適用されます。

2019年12月20日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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