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第三十八話米国非特恵原産地規則を日米貿易協定に適用する不思議

前々回の本コラムで日米貿易協定の発効に関連するエッセイを掲載しました。我が国から米国に輸出するに際して、日米貿易協定上の原産品として日米特恵税率の適用を受けた(例えば、MFN税率5%から日米特恵税率0%になる)場合において、当該産品が米国の非特恵原産地規則の適用により中国原産と判断されるならば、対中国追加関税が日米特恵税率に上乗せされて適用される(同一事例で、日米特恵税率0%から対中国制裁関税25%に上乗せされる)というダブル適用があり得るということでした。

このような特異な事態が生じるには2つの条件が揃わなければならないことも述べました。すなわち、第1に、当該産品が①日米貿易協定上の米国の譲許品目であり、同時に、②米国通商法第301条の対中国追加関税の対象品目であって、かつ、除外品目に入っていないこと。第2に、我が国で生産された当該産品が、日米貿易協定の品目別原産地規則を満たした上で、米国の非特恵原産地規則を適用した結果、我が国で実質的変更が生じたと認められず、主要原材料の原産国である中国が当該産品の原産国と判定されることです。

さて、今回のお話しは、我が国から産品を輸出する際に適用される日米貿易協定の米国規則に限定したものです。日米貿易協定原産地規則においては輸出と輸入とで非対称な原産地規則が適用されるので、我が国から米国に日米貿易協定を活用して特恵輸出する際には、英文の米国規則を理解し、産品が米国規則上の原産品であることを確認してから輸出しなければなりません。そこで注目すべきは、パラグラフ18(c)の規定です。

18 (c)個々の規則が関税分類変更基準を使用して定義され、かつ、HSの類、項又は号レベルで税目(tariff provisions)を除外すべく記載されている場合、当該原産地規則は、産品が原産資格を得るためには当該除外された税目に分類される材料が原産材料であるべきことを意味すると解釈される。当該材料は、米国の国内法に従って、米国或いは日本国の完全生産品である場合、又は第三国からの或いは第三国で生産された材料が米国或いは日本国において実質的変更が生じた場合に原産品とする。(筆者による仮訳)

第1文は、関税分類変更基準の適用上の原則を示したものなので、特段、目新しい内容が規定されている訳ではありません。米国規則における品目別規則としての関税分類変更基準は、当該規則が設定されている8桁の国定税番が属する類、項又は号への変更を求めるものです。関税分類変更基準は、どの程度の変更を求めるかによって類変更、項変更、号変更と緩やかになっていきますが、どのような変更を求めたにせよ、要件を満たさない場合があります。それは、品目別規則が設定されている8桁の国定税番が属する類、項又は号の産品と同じ産品(当該類・項・号に分類されるもの)を材料とした場合です。すなわち、関税分類上の変更がない(関税分類の変更を伴うだけの加工、作業が行われていない)場合です(カテゴリーA)。

次に、当該産品の生産において、カテゴリーA以外の特定材料の使用を制限する政策的意図がある場合には、基本形の類・項・号の変更から、(i)特定材料が分類される類・項・号からの変更又は(ii)特定項・号に分類される材料の一部からの変更を除外する品目別規定を設定することがあります(カテゴリーB)。

日米貿易協定の米国規則で上記の例を挙げると、以下のとおりです。

基本形:「類の変更(CC)」、「項の変更(CTH)」、「号の変更(CTSH)」

A.基本形を満たさない非原産材料:

規則が設定される類、項又は号に分類される材料(すなわち、産品そのもの又は産品の重要な特性を有する未完成品)

B.政策的に特定材料の使用を制限する場合:

(i)第3701.20.00号のインスタントフィルム:「CTH, except from heading 37.02 or 37.03(項変更。ただし、第37.02項又は第37.03項の材料からの変更を除く。)」
(本規則の意味は、)第3701.20.00号のインスタントフィルムの生産に際して、非原産の感光性のロール状インスタントプリントフィルム(第37.02項)又は非原産の感光性の写真用の紙或いは板紙及び紡織用繊維(第37.03項)を材料として使用することを禁じること。
したがって、第37.02項又は第37.03項に分類される感光性のロール状インスタントプリントフィルム又は感光性の写真用の紙或いは板紙及び紡織用繊維が、米国又は日本国の原産品でなければならないことを規定。
(ii)第9013.10.10号の武器用望遠照準器、潜望鏡及びこの類又は第16部の機器の部分品として設計した望遠鏡:「CTSH, except from optical telescopes of subheading 9005.80 (号変更。ただし、第9005.80号の光学望遠鏡からの変更を除く。)」
(本規定の意味は、)第9013.10.10号の武器用望遠照準器、潜望鏡及びこの類又は第16部の機器の部分品として設計した望遠鏡の生産に際して、非原産の光学望遠鏡(第9005.80号)を材料として使用することを禁じること。
したがって、第9005.80号に分類される光学望遠鏡が、米国又は日本国の原産品でなければならないことを規定。

一方、第2文は、冒頭の「当該材料」をどのように理解するかによって、異なる解釈が可能となります。まず、上記カテゴリーAの材料及びカテゴリーBの材料の双方を含むと理解するならば、これらの材料の原産性判断が「実質的変更」に係る米国国内法、すなわち、非特恵原産地規則によって決定されることを規定していると解釈します(広義の解釈)。ところが、「当該材料」がカテゴリーBの材料のみを含むと理解すれば、上記事例で基本形から除外された材料のみ「実質的変更」に係る米国国内法が適用されると解釈することになります(狭義の解釈)。

どちらの解釈を採用したとしても、特恵原産地規則における原産性判断の過程で唐突に非特恵原産地規則を適用しなければならない違和感は消えません。すなわち、我が国の既存のEPA原産地規則では、HS第1類から第97類までのあらゆる産品の原産性を締約国共通のEPA原産地規則で決定できた訳ですが、今回の日米貿易協定の米国規則においては、広義であれ狭義であれ、材料の原産性判断において非特恵規則を使用しなければなりません。

広義の解釈を採用した場合、関税分類変更を満たさない材料はすべて非特恵原産地規則の適用により原産性を決定することにおいて一貫性を保持しますが、カテゴリーAの材料の原産性は、カテゴリーAと同一分類される産品に対する品目別規則が存在するにもかかわらず、非特恵原産地規則を使用して決定しなければなりません。カテゴリーBの材料については、以下の表のとおり、4桁ベースで11品目、6桁ベース27品目において品目別規則が当該税番に設定されていますが、例外なく非特恵原産地規則が適用されることになります。筆者の本稿執筆時における意見としては、材料段階で日米貿易協定の品目別規則を適用すべきとの根拠を明文規定に求められないため、明文規定に従う広義の解釈を支持します。

これに対し、狭義の解釈を採用した場合、カテゴリーAの材料の原産性は日米貿易協定の品目別規則の適用があり、カテゴリーBの材料に対してのみ非特恵原産地規則が適用されることになります。この取扱いは、カテゴリーBの対象税番に対して産品の品目別規則が設定されていなければ単純な話になるのですが、これらの重複品目に対して品目別規則に代わって非特恵原産地規則を適用して当該材料の原産性を決定することとなります。このため、狭義の解釈を採用したとしても、原産性判断を行う対象としての産品に対して日米貿易協定の品目別規則が存在する限り同規則を適用するとの一貫性のある適用ができません。

このような適用原則の下でも、最終産品の原産性を決定するための最低限の品目別規則及び上記パラグラフ18(c)の規定が存在するので、輸出産品自体の原産性の判断は可能です。

米国非特恵原産地規則は100年以上前の判例に基づいた概念規定であり、具体的な原産国決定に係る判断は、継続的に同じ品目について輸出入している事業者であればともかく、一般の貿易事業者の方には決して容易なものではありません。概念規定そのものは公開されており、透明性という意味では誰もが知り得る規則ですが、原産国の具体的な決定に係る予見可能性は極めて低いといわざるを得ません。したがって、継続的に米国に特恵輸出することを予定し、パラグラフ18(c)の規定を適用することになる輸出者・生産者の方々は、できるだけ早い機会に米国税関から事前教示を取得し、リスク軽減に努めることをお勧めします。

表:カテゴリーBに属する材料のHS番号、及び品目別規則が設定されている
8桁税目細分でカテゴリーBの材料の分類番号と重複するもの

カテゴリーBの材料のHS番号 品目別規則と重複
第04.01項から第04.06項まで、
第1901.90号、
第2106.90号、
第37.02項、第37.03項、
第50.04項から第50.06項、
第54.04項、第54.06項、第5402.11号から第5402.49号、
第56.03項、
第6813.81号、
第70.14項、
第72.08項から第72.29項まで、
第73.01項から第73.26項、
第74.09項、第74.11項、
第76.08項、
第8406.82号、第84.14項、第8481.90号、第8486.20号、
第85.01項、第8504.10号から第8504.50号、第8506.50号から第8506.60号、第8515.11号から第8515.80号、第85.35項から第85.37項、
第87.14項、
第9001.40号、第9001.50号、第9001.90号、第9005.80号、
第9506.39号
第9608.60号
第7307.91.10号、第7307.91.30号、
第7307.91.50号、第7307.92.90号、
第7307.99.10号、第7307.99.30号、
第7307.99.50号、第7318.14.10号、
第7318.14.50号、第7318.19.00号、
第7318.21.00号、第7318.24.00号、
第7318.29.00号、第7320.10.90号、
第7320.90.50号、第7326.90.86号、
第8414.10.00号、
第8501.51.20号、第8501.51.40号、第8501.51.50号、第8501.51.60号、第8501.62.00号、第8501.64.00号、第8504.33.00号、第8504.34.00号、第8515.31.00号、第8535.29.00号、
第8714.91.20号、第8714.91.30号、第8714.91.50号、第8714.92.10号、第8714.92.50号、第8714.93.28号、第8714.93.35号、第8714.94.90号、第8714.95.00号、第8714.96.10号、第8714.96.90号、第8714.99.80号、
第9506.39.00号

(注)左欄において、カテゴリーBの材料の分類番号と品目別規則が設定されているHS番号が重複しているものは、黄色でマークされている。

2020年1月17日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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