日本貿易関係手続簡易化協会(略称:ジャストプロ 英文略称:JASTPRO)のウェブサイト

原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第四十一話米国・EUの非特恵原産地規則調査

当方は、今月7日から完全な在宅勤務に入っています。読者の皆様はご健勝でしょうか。在宅勤務になる前の仕事は、セミナー、講演等での資料作成、電話・メールでの原産地に関連する照会への回答、ウェブサイトに掲載するエッセイ・論文の執筆、時間が空けば青山学院大学院で受け持っている講義資料の作成と、それなりに忙しくしておりました。しかしながら、対面して説明・対話を行うことを前提とした仕事が悉く延期・中止され、そのための調整事務も止まったままになった状況においては、原稿書き、資料作成等に集中し、ウェブサイトでお役に立つ情報発信を行うことが、現時点での最善を尽くすことになると考えます。

在宅勤務になる前日、バックパックを背負って、事務所のパソコンと必要な資料を持ち帰り、自宅の食卓をにわかオフィスとして使用しています。しかしながら、食事の度に仕事用具一式を片付けなければならず、書斎付きのアパートで暮らしていた在外勤務当時の優雅な生活を思い出したりします。

さて、在宅勤務とは無関係に、今月は当方にとって感慨深い月となりました。簡単に申し上げれば、2016年12月から始めた 『検証 WTO非特恵原産地規則調和作業』 の長期連載が、今月17日、第40回の公開で完結し、新企画 『JASTPRO調査研究: 非特恵原産地規則』 の連載が始まります。前者は、通商関税政策の歴史の中でも極めて野心的な、理想を追及した構想の実現を目指して始められたものの、次第に現実の重み、主要国間の利害関係に縛られて、最後の段階で「あと一歩」を踏み出すことができずに頓挫した壮大な物語です。その初めから事実上の終わりまでの14年間の交渉に直接立ち会った当時者として、その様子、そこから得られたものを何とか後世に伝えたいと考え、JASTPROから発表の場をいただきました。毎月5〜10ページの連載原稿を書き続けるのは、想像以上に忍耐力を要しました。体調の好不調、内容の得手不得手、その月の仕事の繁閑が重なり、自分が十分納得できる域に達した原稿、唸り声をあげながらようやく仕上げた原稿、いろいろありました。貿易実務に従事しておられる方々に直接関係する内容ではなかったものの、非特恵原産地規則を扱った数少ないサイトであったため、予想外に多くの方々から励ましのお言葉、関連質問をいただきました。そうした貿易実務者の生の声、関連質問の内容から、当方が次に行うべきことが見えてきました。それが、後者の新規連載です。

新規連載は、『JASTPRO調査研究: 非特恵原産地規則』 としているとおり、最終的にはJASTPROの「令和2年度調査研究報告書」としてまとめる予定ですが、その進捗状況を毎月ウェブサイトで公開することにします。基本的に我が国、米国及びEUの非特恵原産地規則について、一般規定を「縦串」とし、品目を「横串」として、縦横から分析してみたいと思います。本調査研究に当たって使用する主要な資料は、以下のとおりです。

我が国の非特恵原産地規則:

関税法施行令第4条の2、関税法施行規則第1条の6及び7、関税法基本通達68-3-5から68-3-9まで

米国非特恵原産地規則:

米国連邦規則集電子版(Electronic Code of Federal Regulations e-CFR)
タイトル19 - 関税(Title 19 - Customs Duties)
〔https://ecfr.io/Title-19/〕
米国税関「全ての貿易コミュニティーのメンバーが知っておくべきこと:米国原産地規則 - 特恵及び非特恵原産地規則」(U.S. Customs and Border Protection, “What Every Member of the Trade Community Should Know About: U.S. Rules of Origin - Preferential and Non-Preferential Rules of Origin”)「周知されたコンプライアンス」に関連する公刊物、2004年4月(An Informed Compliance Publication, May 2004)
〔https://www.cbp.gov/sites/default/files/assets/documents/2016-Apr/icp026_3.pdf〕
税関教示事例検索システム(Customs Rulings Online Search System (CROSS))
〔https://rulings.cbp.gov/〕

EU非特恵原産地規則:

欧州委員会税制・関税同盟総局ウェブサイト「非特恵原産地規則」及び同サイトで引用される個別の規則
〔https://ec.europa.eu/taxation_customs/business/calculation-customs-duties/rules-origin/nonpreferential-origin/introduction_en〕

「令和2年度調査研究報告書」は、我が国から輸出する際に同じ生産工程で生産された物品の表示について、原産国が日本国となるのか、それともそれ以外の材料供給国となるのかについて、事例を挙げて、詳細な説明を加えていく予定です。したがって、ウェブサイトに掲載される事例はそのうちのごく一部となります。特に、米国の原産地規則については、これまで「米国の弁護士に聞くべき内容」としてほぼ空白の法領域であったため、極力、深堀りした調査を進める予定です。年度内に調査報告書をまとめる都合上、連載は1年間、12回となります。

こうした条文別、品目別の分析に入る前の序章として、

「歴史的に最も古い原産地規則は、何時、どこで成立したのか。」
「関税分類や関税評価と異なり、原産地規則にはなぜ世界的な標準規定が存在しないのか。」

について3回に分けて考察していきます。その際、『検証 WTO非特恵原産地規則調査作業』 を要約したサマリーを、序章を締め括るものとして用意しようと考えています。その後、9回の連載については、以下の順番で進めていこうと考えています。

『JASTPRO調査研究: 非特恵原産地規則』

2020年 4月 序章1 歴史的に最も古い原産地規則は、何時、どこで成立したのか
5月 序章2 関税分類や関税評価と異なり、原産地規則にはなぜ世界的な標準規定が存在しないのか
6月 序章3 WTO非特恵原産地規則の調和
7月 第1章 農産品(HS第1類〜第24類)
8月 第2章 機械、自動車等(HS第84類、第86類〜第89類)
9月 第3章 エレクトロニクス、光学機器(HS第85類、第90類)
10月 第4章 繊維(HS第50類〜第60類)
11月 第5章 繊維製品(HS第61類〜第63類)
12月 第6章 化学品等(HS第28類〜第40類)
2021年 1月 第7章 非鉄金属・製品(HS第72類〜第83類)
2月 第8章 その他
3月 終章 まとめ

なお、JASTPRO賛助会員については、「月刊 JASTPRO」(冊子で毎月送付)でもお読みいただけます。

2020年4月24日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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