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第四十二話再考:米国非特恵原産地規則を日米貿易協定に適用する不思議

今回は、第38話(本年1月17日)で公開した「米国非特恵原産地規則を日米貿易協定に適用する不思議」、第40話(3月13日)の「CTC基準を満たさない材料の原産性決定-日米協定での対米輸出」に続く日米貿易協定の米国原産地規則の解釈に関するフォローアップ記事です。

第38話で触れた内容として、「日米貿易協定の中で最も理解しにくい部分は、米国原産地規則のパラグラフ18(c)である」旨を述べました。

パラグラフ18:パラグラフ18及び19並びに表に規定される品目別規則の解釈(筆者仮訳)

(c)個々の原産地規則が関税分類変更基準によって規定され、かつ、HSの類、項又は号レベルで関税項目を除外すべく記載されている場合、当該原産地規則は、産品が原産資格を得るためには当該除外された関税項目に分類される材料が原産材料であるべきことを意味すると解釈される。当該材料は、米国の国内法に従って、米国或いは日本国の完全生産品である場合、又は第三国からの或いは第三国で生産された材料が米国或いは日本国において実質的変更が生じた場合に原産品とする。

パラグラフ18(c)の3行目の終わりから始まる第2文の「当該材料は、米国の国内法に従って、米国或いは日本国の完全生産品である場合、又は第三国からの或いは第三国で生産された材料が米国或いは日本国において実質的変更が生じた場合に原産品とする」という規定にある「米国の国内法」とは、「日米貿易協定の品目別規則ではなく、米国連邦規則第19巻第134.35条(製造により実質的に変更した製品)で、関税特許上訴裁判所(現在の連邦巡回区控訴審)1940年判決(United States v. Gibson-Thomsen Co.(以下「ギブソン・トムセン判決」という。))の原則に従うものになる」旨を米国税関への照会結果として第40話で情報共有したところです。この米国税関の見解によって、パラグラフ18(c)の2つの謎のうち、1つが解明されました。

さて、残るもう1つの謎は、同第1文の「個々の原産地規則が関税分類変更基準によって規定され、かつ、HSの類、項又は号レベルで関税項目を除外すべく記載されている場合、当該原産地規則は、産品が原産資格を得るためには当該除外された関税項目に分類される材料が原産材料であるべきことを意味すると解釈される」という規定の「類、項又は号レベルで関税項目を除外すべく記載されている」とは何かという問題です。第38話では、関税分類変更基準の基本形として、「類の変更(CC)」、「項の変更(CTH)」、「号の変更(CTSH)」があり、

A.基本形を満たさない非原産材料:規則が設定される類、項又は号に分類される材料(すなわち、産品そのもの、産品の重要な特性を有する未完成品、又は類似の産品)
B.政策的に特定材料の使用を制限する場合:非原産の基幹材料の使用を政策的に制限する

の2形態に分け、このどちらもが「関税項目を除外すべく記載されている」材料となりうることを述べました。この点についても米国税関の正式な見解を得るべく前回と同様にメール照会をしたところ、昨今の状況もあってか回答はありません。そこで、筆者として再検討したところ以下の結論に至りました。

まず、この規定の本質は「基幹材料の原産品縛り規定」であると考えます。通常の例では、関税分類変更基準で使用が許されない材料が産品の生産に使用されれば、その産品は原産資格が得られず、原産性の審査は終了します。したがって、非原産材料の使用が許されない重要な特定材料(基幹材料)は、締約国内で前の工程に遡った段階から基幹材料に該当しない材料を使用して当該基幹材料を国内生産した上で当該産品の生産に使用されれば、当該産品は関税分類変更基準を満たし、EPA原産品となります。ところが、日米貿易協定では、本規定の存在により、上記の通常の例よりも厳格な要件が課されます。すなわち、基幹材料が国内で前の工程から生産されただけでは足りず、当該基幹材料が米国国内法上の原産品でなければなりません。この場合に適用される米国国内法が、上述の米国連邦規則第19巻第134.35条(製造により実質的に変更した製品)となります。特定原産材料の使用義務要件は、他のEPA原産地規則でも採用されているところですが、そのような場合でも、材料の原産性判断にはEPA原産地規則が適用され、別の法令に基づいて原産性判断を行うことは極めて異例です。しかも、米国の非特恵原産地規則は、米国税関の事前教示事例を克明に調べていけば輸出しようとする産品の類似事例を見つけることができるかもしれませんが、資料がすべて英語ということもあり、成文法令による行政に慣れ親しんできた我が国の貿易関連事業者にとって大きな負担になるであろうことは否めません。

次に、本件の疑問への回答に進みます(正解か否かは米国税関次第ですが・・・)。日米貿易協定の米国規則は、パラグラフ18(c)第1文で、

個々の原産地規則が関税分類変更基準によって規定され、かつ、
HSの類、項又は号レベルで関税項目を除外すべく記載されている場合、
当該原産地規則は、産品が原産資格を得るためには当該除外された関税項目に分類される材料が原産材料であるべきことを意味すると解釈される。

と規定しています。①と②が条件設定で、③が要件本体となります。譲許品目である241税目(8桁)に対して、①は「CTHルール」、「CTSHルール」等の単純な規則が設定されている176税目、②は「except from・・・」で特定の類、項又は号からの変更を除外する記載がある65税目を指していると解釈します。また、③で付される産品の原産資格要件として、当該除外された関税項目に分類される材料は「原産品」でなければなりません。この③の要件があるために、②の条件に該当する65税目については関税分類変更基準とは呼べない規則に事実上変更されています。この変更を分かりやすく説明すると、以下のとおりです。

米国原産地規則パラグラフ18(c)第2文がない場合

第9506.31.00CTSH(第9506.39号の材料からの変更を除く)

米国原産地規則パラグラフ18(c)第2文がある場合

第9506.31.00CTSH(第9506.39号の材料からの変更を除く)、及び産品の生産に使用される第9506.39号の材料が日本国又は米国における原産品であること。

(注)第9506.31号は、ゴルフクラブの完成品が分類され、第9506.39号にはゴルフクラブの部品 その他のゴルフ用具(ゴルフボールを除く)が分類されます。したがって、ゴルフクラブの部品から完成品を組み立てても原産品とはなりません。

こうした原産材料の使用義務を定める品目別規則は他の原産地規則においても認められるところですが、通常、このような場合には、材料として使用される品目すべてに品目別規則が設定され、生産工程のどの段階でも同一原産地規則によって原産性判断ができます。しかしながら、日米貿易協定の米国原産地規則は、パラグラフ18(c)の第2文で、

当該材料は、米国の国内法に従って、米国或いは日本国の完全生産品である場合、又は第三国からの或いは第三国で生産された材料が米国或いは日本国において実質的変更が生じた場合に原産品とする。

と規定することで、②の条件に該当する65税目については、当該材料の原産資格を「米国の国内法」に従って判断することを求めます。完全生産品であればともかく、当該材料に非原産材料を使用した場合には、米国連邦規則第19巻第134.35条(製造により実質的に変更した製品)を適用して「実質的変更」の有無を判断しなければなりません。

なお、本規定の要件に対してパラグラフ4(a)のデミニミス規定が適用されます。この規定は、「関税分類変更基準を満たさない非原産材料」が産品のFOBに調整した価額の10%を超えず、本協定の原産地規則・同手続の他の全ての要件を満たすときは原産品とすることができるというものです(注)。しかしながら、基幹材料の国産品(原産品縛り)使用義務の趣旨に鑑みて、基幹材料が産品の価額の10%以下に収まることは事実上ありえないと考えます。ただし、第21.05項の2税目(アイスクリーム、氷菓(第4章米国注釈第1条で規定される乳製品))についてはデミニミス規定の適用がないので、第04.01項から第04.06項、第1901.90号の酪農調整品又は第2106.90号の酪農調製品に対して原産品縛りが適用されます。

パラグラフ18(c)の第1文と第2文の謎解きを終え、「日米貿易協定の米国原産地規則は他のEPA原産地規則と何が異なるのか」という素朴な問に対する回答は、

米国原産地規則パラグラフ18(c)第2文の存在により、(i)通常の関税分類変更基準の充足に加えて基幹材料の国産化義務を負うことになり、(ii)国産化に当たっては米国連邦規則第19巻第134.35条の実質的変更を満たす方法で生産を行うことが求められること

となります。

(注)デミニミス規定は、関税分類変更基準を満たさない場合であっても、当該関税分類変更基準を満たさない非原産材料の価額又は重量が産品本体の価額又は重量の一定比率以下である場合には原産品として取り扱うことを許容する「救済規定」です。ご関心のある方は、「八丁堀梁山泊」第12話、第39話もご参照ください。

2020年5月15日 掲載
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