日本貿易関係手続簡易化協会(略称:ジャストプロ 英文略称:JASTPRO)のウェブサイト

原産地関係エッセイ・論文・講演資料

第四十四話日EU・EPA発効1周年記念セミナーでの対EU質疑応答

先月のことになりますが、日EU・EPA発効1周年記念セミナー(本年2月4日東京、6日大阪開催)での欧州側への質問に対する回答が欧州委員会から文書で寄せられました。この文書は、JASTPROを含む共催3団体のウェブサイトに仮訳と共に公開されていますので、ご一読いただければ幸いです。本セミナーは、日欧両当局の責任者が1つのセミナーに同席し、プレゼンを行うという、本分野では前例のない大きなイベントとなり、日欧のEPA原産地規則を所掌する当局作成による資料が時宜を得ていたことに加え、1時間半におよぶ質疑応答での内容が極めて充実していたとして参加者から大好評をいただきました。同じ条文の解釈に両国で相違がないとしても、その取扱いについては国によって実施するための制度が異なり、一様であることはありえません。そのような相違点も含めて相手国の担当者と利用者の面前で自国の取扱いを説明するためには、当局間の事前のすり合わせを含め、公式・非公式に大変なご苦労を強いることになったと思います。あらためて、講師の方々をはじめ、両当局の担当部局で準備に携わっていただいた方々に御礼を申し上げたいと思います。

さて、欧州委員会から文書回答を得たおかげで、これまで実態がよく分からなかったEUにおける特恵実務のコアな部分がある程度明確化されました。今回は、回答文書の中から、質疑応答時において参加者の関心の高かった分野について引用しつつ、解説してみたいと思います。以下、囲みの中の文章は、欧州委員会からの回答部分に筆者が質問内容を適宜要約して加えたもので、筆者の意見は区別しやすいように囲みの外に青字で記載しています。したがって、欧州委員会の正式な回答を参照されたい方は、JASTPROウェブサイトに掲載されている英文をご覧ください。

1.EUの輸出者登録番号(REX番号)に関すること

EUの輸出者登録番号(REX番号)に関すること

EUの輸出者は、6,000ユーロを超える(more than)原産品に対して原産地に関する申告(「Statement on Origin」、以下「SOO」という。)を作成する場合にのみREX番号の取得が求められます。
「輸出者の内どれくらいの割合が登録しているか」についての情報は持ち合わせていません。お答えできる範囲で申し上げれば、EU全体としてのREX番号登録者は30,083者(英国を含めれば42,643者)です。
輸出者がREXシステムに登録するに際して、特恵対象品目のHS番号は必要ですが、あくまでも参考情報としてのものです。いったん登録されれば、輸出者が異なるHS番号の産品にSOOを作成したとしても、登録内容の更新は必要ありません
EUの内部規定は(原産品について)積送総額 (total consignment value) 6,000ユーロに言及しており、その額を超える場合には原産地に関する申告の作成前に輸出者に登録を求めることになっていますが、輸出者がREX番号で特定できない場合であっても、SOOに記載される産品の原産資格について当該産品がEU原産品でないとの絶対的な結論を導くことはできません。
その理由は、その積送 (consignment) に係る価額が、使用されるインコタームズ(例えば、工場渡し価格、FOB又はCIF)、異なる通貨で現される積送 (consignment) の価額に係る為替レートの変動、又は商社によってSOOが作成される後続の取引によって、多くの異なる方法で現されることがあるからです。
SOOに輸出者が明確に特定されている限り、REX番号又はその他の手段(名称、住所、その他)を確認することによってSOOは有効であると認められます。そのように申し上げたとしても、REX番号の不記載は、積送 (consignment) の価額の観点から、日EU・EPA第3.21条(1)に基づいて適用されるリスク判断の要素として考慮されるかもしれません。

【筆者意見】

REX番号の取得は、積送(consignment)に係る価額が6千ユーロを超える場合に必要になるとのことです。筆者は当初、6千ユーロの基準は付加価値基準にならって産品の工場渡し価額であると理解しておりましたが、正確ではなかったようです。なお、欧州委員会の説明によれば、貿易条件がex works、FOB、CIF等で異なる場合があるため、質問者の「インボイス価格が6千ユーロを超える場合にREX番号がSOOに記載されないときには、当該産品は原産品でないと理解してよいか」との問いに対しては、必ずしもそうはならない旨を回答しています。筆者としては、この部分の欧州委員会の回答は、インコタームズを引用しての理由付けについてはあまり説得力がないと思います。一方、最後のパラグラフで「リスク判断の要素として考慮されるかもしれない」旨を言及しているとおり、インボイス上に記載する定型文の一部のREX番号記載の失念によって直ちに原産性が否定される性格のものではないことは、欧州委員会の説明に理があります。念のため、EUのREX番号に関するガイダンスを確認したところ、「積送における『原産品の価額』が6千ユーロを超える」場合にREX番号の登録が必要となるとの記載があり、インコタームズでの特定の貿易条件を指定しない旨が記載されています。また、積送における原産品の価額が6千ユーロ以下の場合、REX番号の登録の有無にかかわらず、SOOを作成できるとの記載があります。

2.原産地に関する申告(SOO)に関すること

2回以上の輸送に使用されるSOOにおけるインボイス等への記載

日EU・EPAに関連したEUの個別ガイダンスである「同一の産品の2回以上の輸送に用いる包括的な原産地に関する申告についてEUに輸入される産品への具体的な取決め」が発出されており、そこには以下の記載があります。

関税上の特恵待遇を要求するための手続きは、当該要求が1回限りの輸送のために作成されたSOOに基づくか、同一の産品の2回以上の輸送に用いる包括的なSOOに基づくかによって少し違ってきます。2回以上の輸送に用いる包括的なSOOが有効期限の初日に使用される場合、その開始の日と終了の日の双方を示していなければなりません。SOOの開始日と終了日の間における同一の産品の関税上の特恵待遇のその後の要求は、この初回のSOOに基づいて行われなければなりません。このために、初回のSOOへの参照がデータエレメント 2/3(作成文書、証明書及び承認書、追加資料)の「追加資料」として含まれなければなりません。この場合に初回及び後続のSOOに使用されるコードは「U111」となります。また、輸入者は、その有効期間中、同一の産品である後続の積送 (consignment) の商業上の書類を記録として保管しなければなりません。後続の積送 (consignment) 用の商業上の書類は、SOOを含む必要はありません。

(このガイダンスは、以下より検索することができます。)
資料【PDF】

上述のガイダンスによれば、輸出者(商社)によって発行されたインボイスは、生産者によって作成されたSOOの文書番号を記載する必要がないことを意味します。

SOOが作成されたインボイスが、(商流の都合で)新しいインボイスに切り替えられた(リインボイス)場合にも使用できるかについては、3つのシナリオに分けられます。

a)インボイスの切り替え(リインボイス)が輸出国で行われた場合:
新しいインボイスにSOOを含む当初インボイスの番号を記載することができますが、当初インボイスは新しいインボイスに別添していただく必要があります。
b)インボイスの切り替え(リインボイス)が第三国で行われた場合:新たなインボイスがどちらかの締約国内で作成されないことから、原産地に関する申告に係る共通ガイダンスに適合していません。
c)インボイスの切り替え(リインボイス)が輸入国で行われた場合:輸入締約国の国内法令の問題となります。EUにおいては、EU関税法典実施規則(委員会実施規則(EU)2015年11月24日付、2015/2447)第69条により可能です。本条は、輸出国で発給又は作成された特恵原産地文書のEU域内での切り替えを規定しています。

【筆者意見】

EUのガイダンスによれば、2回以上の輸送に用いる包括的なSOOは「U111」のコードで輸入申告され、初回に使用された包括SOOが「原本」扱いされ、その番号を次回以降の輸入申告にもデータエレメント2/3(作成文書、証明書及び承認書、追加資料)の「追加資料」として含まれねばならないようです。その結果、輸出者(商社)によって発行されたインボイスは、生産者によって作成されたSOOの文書番号を記載する必要がないとのことです。
この回答は、筆者には意外なものでした。SOOの別紙記載に係る合意文書の内容は、

- 仕入書その他の商業上の文書から当該別紙との関連が明らかな場合、 または
- 当該別紙から仕入書その他の商業上の文書との関連が明らかな場合

であったので、輸出者と生産者とでSOOの作成を一元化できない場合に、この合意内容から推論して(例えば、生産社の納品書に包括SOOを作成し、商社がインボイスを発出する場合)日本側がわざわざ統一案としてインボイスに包括SOOの文書番号を記載することで関連付けることを提示していただいたわけですが、EU側では不要としています。欧州委員会の回答が手続きの簡素化の方向に振れたので、その点については評価するところです。この回答の背景に何があるか欧州委員会から情報を得たわけではありませんが、筆者の想像するところ、

① 包括SOOは「原本」扱いされるので別紙で作成する場合とは事情が異なること、
② EU側の正式回答として日本側提案を受け入れてしまうと日本の輸入者から一律にEUの輸出者に対して本取扱いを半ば強制され、EUの輸出者が対応しきれない、

との2点があるように思います(全くの推測であることを再度付言しておきます。)。
なお、セミナー会場で確認のために行われた質問で、「生産者が作成するSOO定型文言を記載した納品書をSOO以外の部分についても英語で作成しなければならないのか」との内容を含むものがありました。セミナー時のヘンドリクス氏の回答では、EU税関が確認手続きに際して英語の翻訳を求めることがあり得る旨を述べていたと記憶しています。その発言の言外に、常に英語が付記されていれば都合がよいとのニュアンスがあったと受け取りましたが、今回、欧州委員会からその部分の言及はありませんでした。EU側の基本的な方針が輸入申告時のコード入力での明確化と、税関からの確認時に原産性を疎明する証拠を提出すればよいという立場を原則とするのであれば、(筆者の全くの個人的理解として申し上げますが、)生産者から輸出者への納品書に英文の定型証明文さえ記載しておけば必要な要件は満たし、あえて納品書そのものを英文化する必要はないと考えます。すなわち、論理的帰結として、EU税関が納品書の内容に疑義を持って英文への翻訳を求めた場合にのみ翻訳文書をEUの輸入者に送付すれば済むと理解します。

「輸出者」と商業上の書類の作成者が異なる場合のSOO

日EU・EPAガイダンス「原産地に関する申告」の6ページに規定される3番目と4番目のシナリオにおいて、SOOを作成した「輸出者」が商業上の書類を発行した者ではないことを書類上に明記することが必要と規定されていますが、ガイダンスは、商業上の書類を発行した者がSOOを作成した「輸出者」でない場合のシナリオにおいて、特定の文章の記載を求めるものではありません。SOOに記載される文章は、常に日EU・EPA第3章の附属書3−Dに規定される文章であって、「輸出者」の特定を確保するものでなければなりません。

【筆者意見】

日 EU・EPA ガイダンス「原産地に関する申告」、「2.ガイダンス」(6ページ) では、

ただし、3番目と4番目のシナリオでは、原産地に関する申告を作成した「輸出者」が商業上の書類を発行した者でないことを書類上に明記することが必要です。

との記載があるにもかかわらず、特定の文章の記載を求めないと回答しており、共通ガイダンスの意味がよく分からなくなります。対EU輸出においてEU税関がより弾力的な取扱いをしてくれるのであれば、それは歓迎すべきことと思います。

3.保税倉庫への蔵入れに関すること

保税倉庫への蔵入れ後のSOOの使用

EUにおける関税上の特恵待遇の要求は、SOOの12ヵ月の有効期間内に行わなければなりません。例えば、(保税倉庫からの貨物の引き取りの場合には、)関税上の特恵待遇の要求を行う輸入者によって保税倉庫から産品が引き取られる(蔵出し)時にSOOが有効でなければなりません。輸出者は、日EU・EPA上の義務を引き続き遂行することを条件として、輸出締約国から輸出された産品に対して特恵待遇の要求のベースとすべく新たなSOOを作成することが可能です。

【筆者意見】

我が国の関税法が、課税物件の確定の時期を蔵入れの時としているのに対して、EUでは蔵出しの時となるようです。したがって、EUでは蔵出しの時に有効なSOOが提出されればよいことになり、有効期限の1年が過ぎて失効したSOOを新たに作成し直すことも可能とのことです。この弾力的な取扱いは、欧州で展開する日本企業にとっては朗報となるはずです。

4.関税の還付・減免

関税の還付・減免

還付・減免の申請は、有効なSOOに基づいていなければなりません。しかしながら、EUに所在する輸入者による関税上の特恵待遇の遡及的な要求のために、日本国に所在する輸出者は、日EU・EPAの下での義務の履行を継続することを条件として、輸出締約国から輸出された産品の新たなSOOを作成することが可能です。新たに作成されたSOOは、その有効期間内であれば遡及的な要求のベースとして使用することができます。

過払いの関税額の還付又は減免の申請は、通常、税関債務の通知の日、すなわち、EU域内への当該貨物の自由流通を認める税関輸入申告の日から3年以内に提出されなければなりません(EU関税法典第117条及び第121条1(a)、2013年10月9日付、EU規則第952/2013)。

還付又は減免の申請があってから税関当局による決定が行われるまでの期限は、EU関税法典第22条3に規定される標準期間(遅くとも当該申請の日から120日以内)となります。決定に係る期限の延長は、一定条件の下で可能となっています。

還付又は減免の申請先及び決定が行われるのは、加盟国の権限ある税関当局に限られます。(したがって、他の加盟国の税関に対して申請し直すような代替手段をとることはできません。)当該当局に対して税関債務が初めに通知され、過払い関税額が払い戻されることになります。

還付又は減免の申請及び決定に係る手続きの詳細は、EU関税法典委任規則(委員会委任規則(EU)2015/2446)第92条から第97条及びEU関税法典実施規則(委員会実施規則(EU) 2015/244)パラグラフ172-180に規定され、以下で個別ガイダンスも検索できます。

資料 1【PDF】
資料 2【PDF】

【筆者意見】

蔵出しの際の取扱いと同様に、還付請求の際にも失効したSOOを新たに作成した上で、輸入申告から3年以内に還付請求を行うことができるとのことです。

EU加盟国税関の間で取扱いにバラツキがあるとの懸念に対しては曖昧な回答になっていますが、対応策として、特定の税関官署を忌避して他の国の税関官署に還付請求することはできないようです。

5.事前教示

事前教示

原産地(BOIs)又は関税分類(BTI)に関する拘束力のある事前教示を申請し、取得するに当たっては、申請者によって当該決定の使用意図がある限りにおいて、EU域内に拠点を有していることは求められません(しかしながら、EORI番号は必要です。)。関税上の特恵待遇の要求が行われる税関申告はEU域内に拠点を有する申告者(その名において税関申告が行われる者)によって行われなければならないことは事実です。しかしながら、この拠点を有する税関申告を行う者は、間接的な代理人として、当該産品の申告を行い、その名で特恵の要求も行いつつ、事前教示の申請者を代理していたとしてもかまいません。欧州委員会は加盟国とともに、現在、域内に拠点を有しない者が取得した事前教示決定の使用について検討を行っているところです。

英国がEUにおける原産地に関する事前教示(BOI)の過半数を発給しているとの理解は、実態を反映したものではありません。しかしながら、BREXITに係る移行期間終了後、英国で発給された事前教示の効力は英国でのみ有効となり、EU加盟27ヵ国で発給された事前教示は英国ではもはや有効ではないことが想定されています。欧州委員会として、この問題に対応すべきとは考えていません。2019年11月22日付、欧州委員会ガイダンスノート2.3 「英国の離脱及び協定が妥結しない場合の税関関連事項」は、離脱協定による移行期間終了後の展望について、必要な修正を加えた上で(mutatis mutandis)、妥当なものとみなせるかもしれません。

資料【PDF】

【筆者意見】

この回答は、質問者の「EU 域内に拠点を有さず EORI ナンバーを取得できないEU域外企業は、実質的に BTI/BOI 決定の保持者になれないことがネックになっている」との事実から改善を求めたものでした。結果として、「域内に拠点を有しない者が取得した事前教示決定の使用について検討を行っているところ」との回答を引き出し、域内の代理人を介すれば域外者であっても事前教示を求めることができることが明らかとなりました。

さらに、BREXITに関連して、(報道では本年末といわれている)「移行期間終了後、英国で発給された事前教示の効力は英国でのみ有効となり、EU加盟27ヵ国で発給された事前教示は英国ではもはや有効ではない」旨の注意喚起がありました。

2020年7月17日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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