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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

連載 第三話−GSP vs FTA・EPA−

言うまでもなく、関税は、輸入された物品について何が(品目分類:HS)何処で(原産地規則:品目ごとに適用される統一された国際協定はない)幾らで(関税評価:WTO評価協定)製造・輸入されたかがわかると徴収することができます。この三要素が税関における実体法です。ここで強調したいことは、税関業務のコアとなる要素の一つである原産地規則について国際的に統一されたルールがないという事実です。原産地規則には、大別して、GSP/FTA/EPAなどに適用される特恵原産地規則とMFN貿易などその他に適用される非特恵原産地規則の二種類があります。この特恵・非特恵原産地規則のいずれにも国際的な統一ルールが存在しません。ここにROOについて多くを語る意義が見いだせます。他方、輸入に際して所要の手続きに従う必要があります(手続法)。これらのことはGSPやFTA・EPAに係る輸入についても当てはまりますが、通常これらの輸入は無税とされているため、ROOの果たす重要性は増大します。さて、これらの特恵的な貿易の仕組みの間において、実質的な差異はあるのでしょうか。

GSPスキーム(そのROOを含む)は、特恵供与国が提供する自主的な(autonomous)関税優遇措置であって、その仕組みに関して受益国と交渉することなく、独自に国内法で手当てしたものです。とはいっても、UNCTAD特恵特別委員会ではGSPの改善要求がG77から常に出されていましたが、先進供与国はこの独自の一方的な措置であることを盾にとって、交渉にはなじまないとのポジションでした。実は、公式会議とは別にUNCTADが非公式に仲立ちを行い、二国間による「協議」のおぜん立てをしていました。日本は、国民に新たな義務を課し、又は、予算措置を講ずる必要がある場合は、国内法を制定します(GSPは関税暫定措置法8条の2、米国GSPは1974年の通商法が根拠法)。他方、FTAやEPAは、関係国が交渉を行い、その結果双方が合意した国際約束いわば条約であって合意された内容は当事国すべてを拘束します。

GSPとEPA/FTAとの間の基本的な差異には、言わずもがなの感がありますが、関税上の便益の供与が片務的であるか、双務的であるか、という点もあります。GSP導入の決定的な合意文書は、国連貿易開発会議第77総会決議21(II)(1968.3.26)ですが、そこではGSPの根本的な原則というか理念を「一般的、片務的、かつ、無差別的な特恵制度」(a generalized, non-reciprocal, non-discriminatory system of preferences)と表現しています。解説すれば、@GSPが例えば旧宗主国からの特定の途上国群への特恵ではなく広く一般的であること、AGSP供与の見返りとして受益国側から供与国へある種の代償が伴うものであってはならないこと、及びB受益国間において差別的な適用があってはならないこと、の三原則です。他方、EPA/FTAは双務的でなければ意味がありません。

これらの改正や廃止についても同様です。GSPについては、供与国が国内事情の変更(例えば国内生産の大幅な減少により関税による保護の意義が薄れた場合など)、貿易構造の変化(代替品の出現により保護する必要が薄れた場合など)、貿易相手国への外交的な配慮などの要因を勘案して「一方的」に自国スキームの変更を行うことができます。他方、FTAやEPAの場合にはそうはいきません。一方の事情によってはその内容の一部を改変することはできません。あくまでもすべての当事国の合意を要します。国際約束、条約を一旦結んでしまうと、その内容が半永久的に固定されるため、それらの不可分の一部を構成するROOの改変も容易ではないのです。WTO加盟国は多分すべてのメンバーがFTAを結んでいるはずですから数も多く、それらのROOの統一は極めて困難ではないかと危惧しています。数多くのROOルールが併存することは、国際通商を扱うコンサルタントを喜ばせはしましょうが、貿易関係者、メーカー、税関当局にとっては日常業務上大きな頭痛の種となります。

なお、補足ですが、初回にGATT上GSPの認知に30年以上を要したと書きましたが、それではGATT締約国である特恵供与国はどのようにGATT上の問題をクリアーしたかに触れます。GSPの供与についてはコンセンサスによる国連決議に基づき行われましたのでそれ自体は問題とはなりませんが、GATT上はMFN原則に穴をあけるということで「建前上」GATT規定(第1条一般的最恵国待遇:MFN)と齟齬の無いように対処しておく必要がありました。結論を言いますと、先進締約国は、GATT第25条(締約国の共同行動)第5項を援用して、GATT上の義務免除(ウェーバーと呼ぶ)を取得して対処しました。1979年の東京ラウンド妥結後は、「授権条項」に基づきGSPの供与がGATT上認められましたので、ウェーバーを取得する義務はなくなりました。授権条項を詳しく言いますと、「締約国は、GATT第一条の規定にかかわらず、異なるかつ一層有利な待遇を、他の締約国に与えることなしに開発途上国に与えることができる。」こととされ、本規定が適用されるものの一つとして「先進締約国が開発途上国を原産とする産品に対し、一般特恵制度に従って与える特恵関税待遇」をあげています。

これも初回の補足ですが、アリアナ公園の部分で三つの条件のうちの一つ、孔雀の放し飼いに触れましたが、残りの二つは、公園を一般市民に開放することと寄贈者ギュスターブ・ルビヨーの墓を公園の中に残すことでした。なお、公園名のアリアナとは、寄贈者の母親の名前です。

2016年12月14日 掲載
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