日本貿易関係手続簡易化協会(略称:ジャストプロ 英文略称:JASTPRO)のウェブサイト

原産地関係エッセイ・論文・講演資料

連載 第十三話−新EU・GSP・ROOの概要(その2)−

2. 主要新・改正規則
(1) 原産地認定基準

  • @ 新規則の基本的な仕組みとして(例外はもちろんあるものの)、加工工程基準か比率基準のいずれかを選択できる方式とし、比率自体も従来よりも受益国に有利となるようにルールを緩め、更に、特定の品目に対しては、LDCにより一層の便益となる比率や加工の度合いを一般の受益国よりも与えることとしています。これによって、GSPの利益が真に必要としている国に供与したいというEUの哲学が完成します。さて、具体的な内容を主要セクター別に見てみましょう(HSベースによる特恵対象品目別原産地認定基準の詳細は、58ページにわたる別表(Part II)に記載されています)。
  • A まず、農産品(HS第1から24類)については、特に水産品など当該国の完全生産品に限るという従来の基本的な骨格を維持していますが、多くの品目では緩和されたものとなりました。例えば、第15類(動物性又は植物性の油脂及びその分解生産物、調製食用脂並びに動物性又は植物性のろう)は、号の変更基準となりました。また、砂糖を使用する食品については、輸入砂糖の使用を最終製品の重量比40%までの使用制限が導入されました(例えば、第4類の酪農品など、第8類の食用の果実など、HS17.04の砂糖菓子など)。この使用制限措置は、砂糖生産国の多いACP諸国への地域特恵に絡んだ配慮と考えられます。
  • B 次に水産物関連ですが、完全生産品としての資格が付与される「船舶の定義」が緩和されました。具体的には以下の通り三要件に簡素化されました(規則第75条第2項)
    • ア. 特恵受益国若しくはEU加盟国に登録されていること
    • イ. 特恵受益国若しくはEU加盟国の国旗を掲げて航行していること、及び
    • ウ. 特恵受益国若しくはEU加盟国の国民が50%以上の持分を有していること、又は、法人の場合にあっては、その本店又は主たる事務所が特恵受益国若しくはEU加盟国にあること若しくは特恵受益国又はEU加盟国の公法人又は国民が50%以上所有していること
    従来は、船長、高級船員や船員の所属や構成比率についても条件が課されていましたが、これらは撤廃されました。また、改正規則の要件として特恵受益国とEU加盟国が並列に対等に規定されているのが象徴的です。
  • C 繊維・衣類については、大きな変更が行われ、一般受益国とLDC受益国とで異なるルールが適用される特恵対象品目も多く含まれることとなりました。具体的に新たなルールに言及する前にこれまで旧ルールにおいて繊維・衣類にはどのような要件が課されていたのかを簡単に振り返ってみたいと思います。
    • ア. 現在でも多くの先進国において、繊維産業は国際競争力の低さに悩んでいます。例えば、米国の場合、繊維・衣類はGSPの対象とはされていません(過去の多角的貿易交渉においてある米国の専門家は、米国における繊維・衣類は日本のコメに匹敵する自由化が困難な分野であるとさえ発言したと伝わっています。なお、筆者の記憶に間違いがなければ、日本は1984年以降繊維・衣類の純輸入国に転じました)。現在はウルグアイラウンド合意の成果の一つとして廃止されましたが、それ以前は繊維貿易についてはGATT上の特例措置として「国際繊維取極」(MFA: Multi-Fiber Arrangements、GATT上いわゆる灰色措置の性格が協定を意味するagreementとされることなく取り極めとしてのarrangementの語を使用したことに顕著に表れています)で管理されていました。国際貿易に関連する措置は、通常GATTルールにおいては、輸入締約国側が行うことを想定しています。しかしこのMFAは例外で輸出締約国側が数量管理をしていました。灰色措置としてもう一つ有名なものに日本と米国の間で合意された日本製自動車の輸出自主規制措置(VER: Voluntary Export Restraints)をはじめ、その後にいくつかの国によって同様な措置の拡散がありました。この灰色措置もその後多くの品目に適用されましたが、ウルグアイラウンド合意によって、一定期間の経過措置後廃止されました。これも例外措置であったのですが、繊維取極と同様に輸出締約国側である日本などの輸出する側が数量管理を行いました(輸出の「自主」規制でありますから、輸出する側において措置をとるべき、という理屈なのだと思います)。
    • イ. 閑話休題。日本やEUの場合、繊維・衣類は特恵の対象産品ですが受益国別(EUの場合)又は区分ごとのシーリング枠(日本の場合)という形式で数量管理を行っている他、原産地規則上も極めて厳しいルールが課せられていました。基本的な考え方として衣類を製造する場合、主要な工程を四つと規定し、輸入原材料を使用する場合、最低二つの工程が行われなければ原産地としての認定を付与しませんでした(これを我々は、double jump/processing requirementと呼んでいました)。例えば、男子用綿製ジャケットの場合は次のようになります。
      第一段階 原綿の採取 HS52.01
      第二段階 綿糸の製造 HS52.05
      第三段階 綿織物の製造 HS52.08
      第四段階 綿製ジャケットの製造 HS62.03
      これ以外の加工、例えば、染色、洗浄、プリントなどの加工は主要な工程とはみなされていませんでした。主要工程に該当するいずれかを輸入して加工し原産地認定を受けるためには、原綿の場合には二工程後の綿織物まで製造すれば認められ、また、綿糸の場合にはジャケットまで製造すれば足ります。他方、織物の状態で輸入した場合、最終製品のジャケットまでは一工程しかありませんので原産地の認定は不可となります。
      ところが、繊維・衣類の場合、話はこれで終わりではないのです。衣類にはニット製品(例えば羊毛製のカーディガン)の大きなカテゴリーがあります。実はニット製品の場合、主要加工工程が次のように三工程しかありません。
      第一段階 原毛の採取 HS51.01
      第二段階 羊毛糸の製造 HS51.09
      第三段階 カーディガン HS61.10
      ニット製品の場合、綿製品でいう織物(fabric)の状態がとりもなおさず最終製品の形態である「カーディガン」となってしまいます(最終製品に仕上げる工程、例えば、ボタン付け、縫い合わせ、洗浄などは主要な工程には入らないことに留意)。このため、原産地としての認定を受けるためには、輸入原毛からの製造しか可能性は残されてはいませんでした。
  • D 繊維・衣類に適用される主な新規則
    • ア. 二段階加工工程基準は維持されますが、染色する工程(dyeing process)も主要な工程の一つとして追加されました(例えば、衣類及び衣類附属品が含まれるHS第61類及び第62類)。また、HS第51類(羊毛及び毛織物)や第52類(綿及び綿織物)については、原則、号の変更基準の採用となりました。
    • イ. 通常の受益国に二段階加工工程基準が適用されるものについては、LDC受益国の場合、一段階の加工でも認められることとなりました。
  • E 革製品(HS第42類)については、従来は同一の号を除く号の変更基準が適用されていましたが、新規則では、この基準、若しくは、同一の号を含む輸入原材料価格が製品価格の70%未満まで認められるようになりました。
  • F 機械類(HS第84類)や電気機器類(同第85類)については、従来は号の変更条件に加え、輸入部品の使用が製品価格の40%未満であることとされていました。新しい規則では、これが大幅に緩和され具体的には、号の変更条件は残ったものの輸入部品の使用が製品価格の70%未満まで拡大して認められました。
  • G 車両並びにその部分品及び附属品(HS第87類)については、基本的に輸入部品の使用限度が製品価格の50%未満に拡大されました。なお、LDC受益国に対してはこの使用限度がさらに拡大され70%未満となりました。
2017年5月2日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

このページの先頭へ

注意)
日本輸出入者標準コードに関するお問合せは、ページ上部のメニューにある「コード関係お問合せ」をクリックして下さい。

一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会
〒104-0032 東京都中央区八丁堀 2-29-11 八重洲第五長岡ビル4階
コード管理センター TEL.(03)3555-6034 / FAX.(03)3555-6036
代表(庶務室) TEL.(03)3555-6031 / FAX.(03)3555-6032
Copyright©2004 JASTPRO All Rights Reserved.