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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

連載 第十六話−日本とEUのGSP・ROOの差異(その2)−

1.原産地認定基準(続き)

B 加工工程基準
この項においては、主要GSP対象品目別に日本とEUの原産地認定基準の実際の差異を見ていきたいと思います。これを行うためには実はいくつかの前提条件が必要となりますが、最初の条件は、取り上げる品目が日本・EU双方とも「MFNベースで有税品目であって、かつ、GSP対象品目でなければいけない」ことです、次の条件は、比較するわけですから認定基準が異なっているということです。なお、以下に引用する原材料・部品・物品は輸入されたものを意味しますのでご注意ください。

ア. 魚類(HS第3類)

魚類(甲殻類や軟体動物を含む)については残念ながら日本もEUも同じく、原産品からの製造とされています。取り上げることができる農水産品に限りがありますので例外的に登場願いました。

イ. せっけん(HS34.01)
・日本

HS34.01又は34.02に該当する物品以外の物品からの製造(関税番号変更基準であるが特定号の使用が適用除外)

・EU
  • (1)当該号以外の号からの製造。但し、工場出荷価格の20%未満まで同一の号の原材料使用可、又は、
  • (2)工場出荷価格の70%未満までの原材料使用に留まった場合、のいずれか(関税番号変更基準と比率の併用、又は、比率基準のみの選択制)
ウ. プラスチック製のシート等(HS39.20)
・日本

HS39.01から39.13まで又は39.20に該当する物品以外の物品からの製造(上記せっけんの場合と同じ基準の採用)

・EU
  • (1)熱可塑性部分塩からの製造又は工場出荷価格の50%未満まで原材料使用可、又は、
  • (2)LDCの場合、熱可塑性部分塩からの製造又は工場出荷価格の70%未満までの原材料使用に留まること(加工工程基準と比率基準の併用ないし選択制、また、LDCの場合は比率が更に20%分加算され優遇された取り扱いとなっている。)
エ. 革製品(HS第42類)
・日本

製造しようとする物品と異なる関税定率法別表の項(HS42.05を除く)に属する物品からの製造(関税番号変更基準の採用)

・EU

製造しようとする物品と異なる号からの製造、又は、工場出荷価格の70%未満までの原材料の使用に留まること(関税番号変更基準又は比率基準の選択制)

オ. 綿織物(HS52.09)
・日本

生機(「きばた」と読みます。布生地の染加工する前の布生地)からの製造(加工工程基準の採用)

・EU
  • (1)天然・人造繊維からの紡糸又はフィラメント糸の押し出し加工(いずれの場合にあっても織加工を伴うこと)、又は、
  • (2)染色又は塗りを伴う織加工、又は、
  • (3)織を伴う糸の染色加工、又は、
  • (4)最低次のカッコ内の例示のうち二の作業を伴うプリント加工(磨き、漂白、シルケット加工、ヒートセッティング、引き起こし加工、カレンダー処理、収縮抵抗処理、パーマネント加工、デカタイジング処理、含浸処理、修繕処理及びバーリング処理)、ただし、使用する未プリント織物の価格が処理後の工場出荷価格の47.5%未満となること(複数の加工工程基準の選択制、一つは比率制限が課せられている)
  • (5)LDCの場合は、織加工又は上記(4)の条件の二つの選択制
カ. メリヤス織物及びクロセ織物(HS第60類)
・日本

化学品、HS47.01から47.06までに該当する物品、紡織用天然繊維、人造繊維の短繊維又は紡織用繊維くずからの製造(加工工程基準の採用)

・EU
  • (1)天然・人造繊維からの紡糸又はフィラメント糸の押し出し加工(いずれの場合にあってもニット加工を伴うこと)、又は、
  • (2)染色、フロッキング処理又は塗り処理を伴う染色加工、又は、
  • (3)染色又はプリント処理を伴うニット加工、又は、
  • (4)ニット加工を伴う天然繊維の染色、又は、
  • (5)ニット加工を伴うねじり処理又はテクスチャリング処理。但し、使用されたねじり処理が行われていない又はテクスチャリング処理が行われていない糸の価格が処理後の工場出荷価格の47.5%未満となること(複数の加工工程基準の選択制、一つは比率制限が課せられている。)
キ. 衣類及び衣類付属品(HS第62類)
・日本

紡織用繊維の織物類又は織物からの製造(加工工程基準の採用)

・EU
  • (1)裁断を含む織り加工、又は、
  • (2)最低次のカッコ内の例示のうち二の作業を伴うプリント処理前のメーキャップ加工(磨き、漂白、シルケット加工、ヒートセッティング、引き起こし加工、カレンダー処理、収縮抵抗処理、パーマネント加工、デカタイジング処理、含浸処理、修繕処理及びバーリング処理)。但し、使用する未プリント織物の価格が処理後の工場出荷価格の47.5%未満となること
  • (3)LDCの場合は、織物からの製造(複数の加工工程基準の選択制、一つは比率制限が課せられている、LDCにはより緩和した加工工程条件の採用)
ク. 電気機器、録音機、音声再生器等(HS第85類)及び光学機器、写真用機器、精密機器等(HS第90類)
・日本

使用した非原産品のうち、生産された物品と異なる関税定率法別表の項に属するものの価格の生産された物品の価格のうちに占める割合が40%以下となり、かつ、生産された物品と同じ関税定率法別表の項に属するものの価格の生産された物品の価格のうちに占める割合が5%以下となる製造(関税番号変更基準と比率基準の併用)

・EU
  • (1)当該号以外の号からの製造、又は、
  • (2)使用された原材料の価格が生産された産品の工場出荷価格の70%未満に留まること(関税番号変更基準か比率基準の選択制)

[補足コメント]

以上主要品目について見てきましたが、EUの原産地認定基準の方が、例えば衣類に適用される基準を見ますと一般的に精緻であるとの印象は受けますが、多くの特恵対象品目においては日本の基準よりも緩和されているように思います。

  • ア. 品目別原産地認定基準に使用されている原材料の価格についてですが日本・EU共、WTO関税評価協定に言う通常の課税標準である「CIF価格」を指します。なお、この価格が判明しない場合は、実際の運用として当該製造工場における仕入れ価格が用いられます。
  • イ. 他方、生産された物品の価格については差異が見られ、EUは工場出荷価格(Ex-works or Ex-factory price)を、また、日本は本船甲板渡し価格(FOB価格)を採用しています(施行規則別表備考(六))。これらINCOTERMSに明るい専門家に当時伺ったのですが、FOBと工場出荷価格との差は大雑把に言って5−8%位ではないか、とのことでした。
  • ウ. 筆者が現役でセミナー行脚をしていた頃、例えば、上記の電子機器や光学機器(HS第85類及び第90類)の原産地認定基準は日本とEUでは同じでした。違いは、二つあって、一つは、上述のFOBと工場出荷価格の違いで、日本の方は分母が大きくなるので分子となる輸入部品を多く使用できる効果がありました。もう一つは、異なる号の輸入部品上限の40%と同一号に分類される輸入部品の使用上限5%の計算の仕方からくる差でした。EUはトータルとしての輸入部品割合に関し上限の40%を超えないこととして運用していました。一方、日本は、合算して計算し上限を45%として運用していました。セミナーでは、この二点をとらえ、日本の方が多くの輸入部品を使っても原産地として認定される可能性が高くなるので有利ですよと強調したものでした。今となっては、使えませんが。
  • エ. これまた当時の話ですが、オーストリアの古参の専門家に「輸入部品の使用限度を40%」に設定した理由について尋ねたことがあります。真偽のほどは定かではありませんが、彼曰く、「GSP導入以前の話だが、ECとEFTAとでFTAの交渉当時からどこまで認められるかについて議論していた。なかなか決まらなかったが、ある実証研究ペーパーが出されそれによると、概ね4割の輸入部品の使用であれば製造国に原産地を賦与してもいいだろう、ということだった。国内的には、当該製造国における国産割合が過半数を超えた60%になるので、関連国内産業界に対しても大きな問題となることなく説得できるだろう、と考えていた。」ということでした。
2017年6月5日 掲載
文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。

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