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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

連載 第十七話−日本とEUのGSP・ROOの差異(その3)−

1.原産地認定基準(続き)

C 自国関与制度(日本:関税暫定措置法施行令第26条(原産地の意義)第2項、EU:規則第84及び第85条)
これは特恵供与国からの原材料が受益国において組み込まれて加工・製造され、当該供与国に輸出された場合、当該供与国の原材料を原産地認定基準の適用上、当該受益国の原産品としてカウントするというものです。日本はGSP開始当初から供与していましたが、EUはそうではありませんでした。自国関与制度は、英語では、通常、Donor Country Content Ruleと言いますが、EUの場合、規則第84条ではBilateral Cumulation(しいて訳すと、二国間累積原産地制度でしょうか)という語を使用しています。また、EUの場合、締結しているFTAの余波があるのでしょうが、込み入っていて、EU加盟国のみならずノルウェー、スイス及びトルコを原産とする原材料についても、EU産品扱いをしています(相互条件で、これら三か国もEU原産の原材料について同様の取扱いをします。)。ただし、HS第1類から第24類までの農水産品は除外されます(規則第85条)。

D 累積原産地制度(日本:関税暫定措置法施行令第26条(原産地の意義)第3項、EU:規則第86条)
通常は、原産地認定を受けるのは一の受益国ベースですが、累積原産地制度下においては、Full Cumulationの場合、一のGSPスキームにおいて全ての受益国が関与する加工のすべてを合算して認定する方式(full and global cumulation)及び合算を地域経済グループ・ベースで認める方式(Regional Cumulation)の二つのやり方がありますが、日本・EUとも地域経済グループに供与しています。日本はASEANのみに供与していますが、EUはASEAN(ただし、ミャンマーは除外)以外にも次の三つの地域経済グループにも供与しています。

  • ア. 中南米・南米諸国 11か国(ボリビア、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ、ペルー及びベネズエラ)
  • イ. SARRC 7か国(バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン及びスリランカ)
  • ウ. MERCOSUR 4か国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ及びウルグアイ)

なお、以前触れましたが、EUは個々のグループに累積原産地制度を適用しない除外品目リストがあります。

これまた、以前Extended Cumulationという表現で触れましたが、この仕組みの基本的な概念として、通常の累積原産地制度を指定されている地域統合グループの受益諸国とGATT第24条の規定によってEUが締結している自由貿易協定締結諸国にも拡大して適用するというものです。繰り返しは避けますが、この仕組みは新たな試みであることから、新規則には受益国からの個別の要請に基づき、EUと協議の上、その態様、要件などについて合意する必要があるほか、いくつかの条件が設定されています。受益国からの要請が出されなければ先に進みませんが、可能性の議論をすれば、この制度は、例えば、ASEANメンバー国ベトナムが韓国からの部品を累積加工し、同様にEUにGSP輸出することも選択肢に入ります。

E EUの特別規定(Derogation Clauses)
これには二つあって、一つは、原産地基準認定上、要件として完全生産品の使用が規定されている場合であっても、一定条件下においては品目により製造された産品の全重量の15%まで、又は、同様に製造された工場出荷価格の15%までは輸入原材料の使用が可能となる規定(規則第79条)。他の一つは、特別の事情が生じて短期間では原産地規則認定基準が順守できない場合、受益国はEUと協議して限定された期間について、規則からの逸脱が認められるというものです(規則第89条)。日本のGSP・ROOにおいては、この二つの規定に相当するものは存在しません。

2.特恵原産地証明書:証明機関の違い

・日本

特恵原産地証明書の発給については、原産地の税関、税関が原産地証明書を発給していない場合は他の官公署、又は商工会議所その他これに準ずる機関とされています(関税暫定法施行令第27条(原産地の証明)第4項)。

・EU

特恵原産地に係る自己申告(証明)については、今年から特恵を利用する輸出者の登録制度が完全実施されていることをEUの新GSP・ROO規則のところで触れました。新規則の随所に証明機関について出てきますが、定義を定めた規定には表れてきません。原語では、「the competent authorities」(権限ある当局、例えば、規則第68条、第91条)ないし「the governmental authorities」(政府機関、例えば、規則第69条)とあり、このことから、特恵原産地証明書の発給について権限を与えられた政府機関(例えば、税関及び貿易・通商を担当する政府機関など受益国政府が決定してEUに通知する。)と解釈するのが自然でありますので、日本のように民間の団体である商工会議所までは含まれません。

特恵原産地証明書、原文ではGSP Certificate of Origin Form Aといいますが、特恵セミナーを通じて得たこれにまつわる経験を二つほど蛇足ながら付け加えたいと思います。

一つは、1980年代初頭、韓国でソウルを皮切りに、数か所でNational GSP Seminarが日本のJETROに当たるKOTRA(Korea Trade-Investment Promotion Agency: 大韓貿易投資振興公社)のホストで開催されました。ある日、ソウル市庁舎に連れていかれたのですが、当時、一階のど真ん中のホールに特恵原産地証明書の発給カウンターがありました。便利と言えば便利ですが、一瞬驚いたものです。衛星放送が現在ほどではないご時世に、釜山では日本のテレビ番組を見たり、「日式食堂」で日本食を食したり、新鮮な経験をしました。

もう一つは、如何に輸出者にこの証明書を取得してもらうかについての努力にまつわる話です。受益国で開催されるセミナーには、現地邦人企業の駐在員の方も何名か参加されます。場外で忌憚のない意見交換をするよう心掛けていましたが、証明書取得の苦労話を最初のころは良く伺ったものです。日本の場合、通関ラインに人ひとり張り付けておくと、通関業者にとって人件費はバカにならないと思います。他方、途上国は人件費が安く、証明書取得に人ひとり張り付けても大してかからないようです。筆者が初めてフィリピンに来たのは1982年ですが、当時の人口は5,500万人と言われ、35年経過した今では、1億人を突破しました。当地の税関に行きますと、通関ラインには業者関係者で一杯でした(因みに、フィリピンでは税関が特恵原産地証明書の発給事務を行っています。)。苦労話に戻りますが、出会った駐在員の多くが語ったところによりますと、結果として特恵税率の適用ではなくて、協定税率や暫定税率の(無税)適用になったとしても、すべからく特恵原産地証明書の発給を受けてください、と現地の輸出者に指導しているということでした。そうしないと、勝手に判断されて発給を申請しないことがあって、事後にあわてることになった経験からこのように指導するようにした由です。

脱線のついでに、もう一つに触れてこの回を締めたいと思います。フィリピンでは(事務所の名前はうろ覚えですが)One Stop Export Documentation Centerというのがあって、この事務所には税関をはじめ貿易に関係する政府機関から人が来ていました。特恵原産地証明書の発給など必要な書類は基本的にこの事務所を一周しますと終えることができるようになっていました。今でいえば、輸出に特化したマニュアルな一種の「シングル・ウィンドウ」といったところでしょうか。ASEANは税関分野における貿易円滑化に鋭意取り組んでおり、シングル・ウィンドウも主要な課題の一つですが、日本のようにすっきりとした形に仕上がるまでには幾分時間がかかりそうです。

2017年6月15日 掲載
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