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連載 第二十二話−ジュネーブで暮らしてみて(その2)−

【毎日の生活】

現地事情について何から書いたら良く理解していただけるか悩ましいところですが、とにかく書き始めてみましょう。ジュネーブはフランス語圏であり、土地特有の感情として当地で生活するのならフランス語を話してもらいたいというのがありました(25年以上ジュネーブに暮らしていたある邦人によれば、フランスとスイスの国境はその昔キリスト教の宗派の異なる地域の境目に国境線を引いたのだ、との蘊蓄がありました。)。こちらは仕事の英語でやっとなのにフランス語まではと言う気持ちが正直なところでした。スイス人の中には筆者よりも英語を流ちょうに話せる人が沢山いるにもかかわらずおくびにも出しません。人が悪いですね。つっかかりながらもすこしでも使う姿勢を見せますと、一転して親身になって聞いてくれます。次第にこちらも場数を踏んで「すれて」きますと、わざとゆっくりと喋ったりしたものです。難しい内容は無理ですが買い物位だと、話すのは子供の方が会得をすることが早いので途中から息子を「通訳」に仕立てたものです。

スーパーでのまとまった買い物をする時間は日曜が開いていないため土曜しかありません。スイスには日本の大手のスーパーに当たる「ミグロ」(Migros)という最大手のチェーン店があります。ジュネーブと言うかスイスは、東京と同じくらいまたはそれ以上に物価が高い国です。チーズなどの酪農品、精肉、海産物・鮮魚、野菜、果実類は絶対フランスの方が安いのです。勢い、土曜は息子二人を連れてフランス側に買い出しです。国境を通過しますので税関のチェックポイントがあります。スイス側は必ず止まり、税関職員から行けの合図があるまで待ちます。一応、笑顔を見せます。他方、フランス側は事務所から出てきません。一旦停止して、敬意を表してから通過します。ところが、フランスの税関職員は検査するときは徹底的にボンネットまで開けて検査します。時折、このような際立った違いを見ることができます。当時、スイスでは精肉について一人当たり500gの制限がありました。息子二人分で1キロ稼げます。土曜にはジュネーブ近郊のフランス側で「市」(マルシェ、marché)が立ちます。新鮮な野菜、果物、チーズ、ハム類を買いに行ったものです。フランス人は生魚が苦手な人が多いのですが、牡蠣は別で季節になると市で沢山出回ります。日本のように身が厚くなく20個位は簡単に胃に収まってしまいます。秋口に入りますと、市にはきのこ類が並びます。

現地では生水は飲みません。基本的に軟水の日本と異なり硬質の水です。スイスの水道は飲めると言われていましたがカルシウム分が多いとのことでした。ミネラル・ウォーターは、日本に比べますと割安でした。他方、日本と異なりレストランでは水は有料で、注文の際、ガス入り(con gaz)又はガスなし(sans gaz)かを聞かれます。ジュネーブから見てレマン湖を挟んで反対側に日本ではミネラル・ウオーターで有名な「エビアン」(Évian)市があります。ここに「エビアン水の博物館」がありますが、館内敷地に二か所、エビアンのミネラル・ウオーターが出しっぱなしになっているところがあります。一時期、車で30分かけて空のペットボトルを持ち込み、土地の人に交じって、ただのエビアン水を汲みに行ったものです。せこい話ですね。また、ジュネーブから行ってエビアンの町に入る手前の廃線の一帯はなぜか立派な「蕨(わらび)」が毎年生える秘密の場所でした(アクの取り方を知らないせいか現地の人は食べないと見えて、時期になるといつも沢山生えていました。)。昔はジュネーブ市と隣り合わせのフランス側との間に緩衝地帯が設けられ、WCOに言う「frontier trade」(一種の非課税地域)が行われていたという話を聞いたことがあります。

【現地に住んでいる人の食生活】

ジュネーブは物価が高く、high cost of livingに対処するために共稼ぎがスタンダードとの印象を受けました。その影響もあるのでしょうが、子供の同級生宅の普通の家庭に夫婦だけで呼ばれたことが何度かありますが、質素でした。その家の方針なのかもしれませんが、夕食は子供達には簡単なものを与え、早めに就寝させているとのことでした。スイスの田舎と言うか農家の食事、特に冬季は、野菜スープ、生ハム:サラミの盛り合わせ、チーズ、硬いパンが中心とのことでした。大家さんはイタリア系スイス人と書きましたが、彼の北イタリアの別荘(と言うよりは彼のお爺さんの生家)に誘われて一緒に行ったことが有りますが、パスタを含めイタリア片田舎の素朴な郷土料理は今でも良き思い出に残っています。近くの崖には野生のアイベックスがいました。帰途、彼は多くの荷物がありましたが、イタリア側からスイス側に入る際、自分だけが知っている道の何本かのうちの一本を通りジュネーブに戻って来ました。その後、暇なとき何回か試したのですが、この道にはたどり着けませんでした。

ジュネーブ市内には、日本人が良く行く魚屋さんがあり、新鮮な魚は刺身様にさばいてくれました。スペイン、フランスやイタリアは地中海に面しており、新鮮な地中海マグロ(クロマグロというか本マグロ)が時折入荷します。冷凍ものではないので脂の乗ったトロ、大トロ部分がたまに手に入りました。通常、マグロは筒切りして売られるのですが、トロのあるベリーの部分は割高で特別な切り方をしていました。これも日本人の影響だと思いました。フィリピンでもミンダナオのへネラル・サントス市(General Santos)は日本への冷蔵キハダマグロの輸出基地ですが、常夏の国ですのでベリー部分でさえも脂は差ほど乗っていません。日本への輸出に向かないマグロ(鮮度の問題でありません、「打ち身」があるものや、小さくとも傷を負っているものははねられるようです。)がマニラにも届けられ、筆者が毎週朝行く「土曜市」にも並びます。

UNCTAD最初の勤務地マニラでは、子供が小さいこともあってメイドさんを使っていたのですが、ジュネーブ転勤が決まってメイドさんを連れて行くことを検討しました。当時のスイスのルールによると、月12万円を超える最低給与、フランス語会話教室に通わせること、独立した部屋を与えることなどの待遇が最低条件でした。子供がなついていましたので悩みましたが、結局、諦めました。

【余暇の過ごし方】

運動は一通りしたつもりですが、上手になるという意欲に欠ける嫌いがあり中途半端に終わることが多くありました。エビアンにはゴルフコースもあり、たまにプレイしましたが、春のサクランボ、秋の栗がコース途中にあり、ボールが勝手にぶれるのに合わせて採取にいそしんだものです。テニスも割安で出来ました。夏季にはプールなども隣接していて、時折、若いトップレスの人を見かけますが、途端にワイフから叱責の声が飛んできます「どこ見てんの!」。冬はやはりスキーです。ジュネーブ市内でもマイナス15度位まで下がります。筆者は子供の頃北海道の山奥で育ち、冬はスキーで学校に通っていました。人には教えられないのですが不格好でも体が覚えていてすぐに滑ることができ、冬は必ず一週間単位で楽しんだものです。フランス側のスキーリゾートに行くことが多かったのですが、ジュネーブでも市内から15分位でジュラの山並みのスキー場があります。フランス側で近いのは、ジュネーブからシャモニーを超えて30分位にメジェーブ(Megéve)のスキー場があります。

滞在中、印象が特に強かったスキー場が二か所ありました。一つは、フランスで1992年に冬季オリンピックの開催場となったアルベールビル(Albertville)で、開催後、選手村を改造したところが割安の宿泊地になっていました。混んでいないうえに、コースが初心者用から上級者用まで沢山揃っており楽しめました。一番の思い出は、近くのレストランで食したラクレットでした。直径50センチ位の丸形のチーズを半分に切り、専用の器具に載せ、直火を当てて溶けだしたところを削って、ジャガイモ、ピクルス、生ハム、バゲット、赤ワインなどと堪能しました。欧州のスキーリゾートでは、通常一週間単位の宿泊となります。土曜に入って、翌週の土曜に出る形となります。これ以下の期間を滞在することも可能ですが、割高の料金体系が適用されます。

もう一つは、マッターホルンの正反対のイタリア側の町、チェルビニア(Cervinia、標高2,050m)のスキー場です。イタリア側からみたマッタ−ホルンは残念ながら不格好で別の山のようです。ところが3,200m位のところから麓までゲレンデが約12キロもあると言われており、本当に滑り応えがありました。尤も、息切れして一気には下れませんので休み休み滑っていくのです。スイス側にもスキーリゾートは高級なところが多いのですが、出される食事を考えますと、コストパフォーマンス的には、やはり、フランスかイタリア側が合っています。ヨーロッパでは冬季にスキーで国境越えも可能となりますので税関もおちおちしてはいられません(こんなことは、海に囲まれた日本では考えられないことです。)。因みに、1968年のグルノーブル冬季オリンピックで3個の金メダルを獲得したフランス人の名スキーヤーであるジャン=クロード・キリー(Jean-Claude Killy)選手は、税関職員でした。

冬季、気軽でのんびりできるのは、何といっても自宅に呼んだり呼ばれたりすることで、現地で調達できる範囲内の食材を活用した日本料理は外国人には好評でした。

2017年8月2日 掲載
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