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連載 第四十三話-UNCTAD・GSPセミナーこぼれ話(その14)-

世の中に美味しいものを嫌いな人はいないと思いますので、今回はまず世界の珍味と評判の高い二つの食材のエピソードから始めたいと思います。

【キャビア】

初めて普通の量のキャビアを食したのは、6年にわたる一回目のUNCTAD勤務を終えて帰国する際、中古で購入したパワーステアリングなしのVW「ゴルフ」を国連のロシア語通訳に売却したのですが、値切られた代償としてロシア産のキャビアを一瓶頂いたのがきっかけです。チューリッヒやロンドンなどの空港の免税売店には「キャビア・ハウス」があって、由緒正しい超高価なイラン産のキャビアなどを売っていますが、高価すぎて筆者には手が出ません。それで身の丈に合った対応をしてきました。ロシア産のキャビアは扁平の円筒形の瓶に入った113gか同じく平たいが容量が少ない缶詰(この通訳によれば、昔は、缶詰タイプであれば二個1米ドルで買えたとのこと)がターゲットでした。ロシア(旧ソ連)と友好国の、例えば、ベトナム、ラオス、カンボディア、モンゴルに出張の際は、必ずローカルマーケットを含め「探索」に出たものでした。当時は結構の確率で見つかりました。何回かの試行錯誤を踏まえ買い方にも工夫を凝らし、欲しがらない素振りをして値段を聞きます。先方も商売ですから相手が日本人風だとわかると必ず吹っかけてきます。先方が売りたければ、暫くのやり取りの後こちらが帰る素振りをすると、ラスト・プライスと言って値段を落としてきます。実はここからが真の交渉の始まりです。努力の甲斐むなしく値段が折り合わない場合は仕方がないので別の店を探します。こちらも時間切れになり帰る日にいたれば、止む無く最初の店に戻って買うこともありました。現地ではめったに売れる筋の商品ではないようで、大体売れずに残っていました。

実は、筆者の部下であったイタリア人、ステファノも大のキャビア好きでした。一度一緒にポーランドに出張しました。週末、町中に探しに出ましたが最初は中々見つからず、鮭のオレンジ色の卵「イクラ」(ロシア語なのでイクラと発音していました。)だけでした。探し疲れてイタリア風レストランに入りましたら、「キャビア・スパゲッティ」があるというので注文しました。いわゆる裏メニューです。熱々にしますと魚卵であるキャビアが焼けてしまいますので、適当な温かさにしてありました。その日は土曜日でしたが、ステファノがこの店で情報を仕入れ、翌日曜日にサッカー場でフリーマーケットが開かれるがラッキーなら隣国のベラルーシ人がキャビアを売っているかもしれないとのことで、翌日、電車で行きました。サッカー場なだけあって十分な広さに凄い人だかりで日用品から雑貨類、衣類と、バンコク郊外の日曜マーケットのようでした。30分位探したでしょうか、ありました。ステファノも心得ていますから、日本人の筆者が先に出ますと吹っかけられますので、彼が交渉人になります。ロシア製缶入りハーフ・キロ100ドルまで落としました。味見もさせてもらいました。もう、買うしかないでしょう。

ここまで書きますと君たちは仕事をしていないのではないかとお思いの読者がおられると思います。ポーランドをはじめ、ハンガリー、ルーマニアなどのいわゆる東欧諸国は旧ソ連などと共に途上国対策としてGSPの供与国でした。ところが、経済の実体はそこまで誇れるものでもなく、西側先進国の多くはこれらの諸国にGSPを供与しており、当時の東欧諸国は同時に受益国だったわけです。冷戦終結後、様変わりして東欧諸国のうち数か国はEUに加盟しています(例えば、ポーランド、ハンガリー、ブルガリア)。筆者はエコノミストではありませんので、当時の東側諸国の計画経済体制(例えば、統制された小売り価格制度など)における関税の役割・機能、また、特恵関税のこれらの国に及ぼす効果などに疑問を抱きつつも、自分では処理できる課題ではないと勝手に判断して真剣に取り組んだことはありませんでした。ともあれ、冷戦構造が終結した後の1990年初頭、これら東欧諸国のすべてに出張して西側先進国のGSPスキームを説明しました。

いつも成功するわけではありませんで、失敗談も結構あります。トルコ、イスタンブールのバザールで買ったキャビアは五個も買ったのにすべて人造でした。一個だけ自分への戒めのため冷蔵庫に今でも保管しています(本物のキャビアは薄く塩漬けしていますので最低3年は持つそうです。)。モンゴル、ウランバートルのホテルに隣接したショッピング・モールで買ったのも偽物でした。開けて味見するわけにもいきませんので、ギャンブルになるわけです。こういう時は非常に悔しいものです。ステファノとルーマニア(「ローマ人の国」の意)の首都ブカレストに出張し、宿泊ホテルのレストランでキャビアを注文したら、筆者でもわかるほどの偽物でした。すかさず、ステファノは責任者を呼び、注文はなかったことにしました。このようなときは頼もしいイタリア人です。

イランでセミナーがあった時は、別の意味で残念な思いをしました。誘いはあったのですが、米国人の上司が行くはずもなく、結局アジア・太平洋地域プロジェクトのスタッフのみで対応することになりました。何と、セミナー終了時にGSP専門家一人一人にキャビアの詰め合わせが贈呈されたそうです。これを聞いたとき、忸怩たる思いで心中穏やかではありませんでした。現地の日本人の中には、納豆のようにキャビアをご飯の上にのせて食べると聞きました。かなり贅沢ですね。ADB時代には、あるセミナーでアゼルバイジャンの貿易省の役人と友人になりました。英語が堪能なため別のセミナーにも出席するというので買ってきていただきました。4個で100ドルでした(瓶詰でかつ形態もロシア製のものと同一で、製造国名位の違いでしかありませんでした。)。最近は、キャビアを取り出した後、おなかを縫合してカスピ海に戻す事業や、日本では多くの場所で養殖をしています。チョウザメの肉は結構いけるらしく、そのうち魚肉が市場に出回るかもしれません。その暁には、筆者如きはキャビアを最早買えそうにはないのでチョウザメ魚肉専門となっていることでしょう。

ポーランドでは別の機会に出張した際、缶詰タイプのものを買い占め、あるだけ15個くらい買いました。一個、当時、最終プライスで7ドルでした。今ではありえない話です。ポーランドにはお世話になりましたので、キャビア編はポーランドの他のエピソードで締めくくりたいと思います。ポーランドはある意味大変可哀想な国で、地理的にドイツとロシアに挟まれており、例えば、二回の大戦時には両国軍の「通り道」となりますので、必ず大きな被害を受けました。首都ワルシャワに行きますと、修復はされていますが、第二次大戦における壊滅的な被害の痕跡を見ることが出来ます。市内のワジェンキ公園に行きますと、静かで人通りも多くなく癒されるのですが、ショパンの像を見ることが出来ます。国立美術館に行きますと、古伊万里焼(だと思いました)も展示されていました。ワルシャワ市の中央にある旧ソ連からの贈り物、文化科学宮殿は現地の人には極めて不評で、聞いたジョークでは、「君は文化科学宮殿で働いているんだって。なんて幸せなやつなんだ。中からなら宮殿は見えないからね。」でした。

【ふかひれ】

まともな大きさの姿煮を初めて味わったのは、日本ではなくバンコクの原宿との異名を持つサイアムスクエアの中のフカヒレ専門店でした。二回ほど味わいましたが、どうも「お上りさん」相手のようなレストランのような気がしましたので、いろいろ調べてみてたどり着いたのが、市内中央駅からほど近いところにある中華街、ヤワラートにある専門店でした。20軒以上のフカヒレ専門店がありました。国連の日当では毎日は無理ですので、二日は粗食して三日目に頂くというような感じでした。ケチなので店の名前は出しませんが、店頭に乾燥フカヒレを戻した色々なサイズの姿煮用のフカヒレが値段と共に陳列されています。これを選び注文しますとカニのツメ肉やシイタケと共に鶏ガラの濃厚なスープの中に出されてきます。値段が張りますが、アワビ入りのフカヒレも注文できます。感覚的には、日本で2万円する姿煮の三分の一程度で独り占めすることが出来ます。親に感謝しているのは、屋台で食べても耐えられる丈夫な胃袋を頂いたことです。バンコクの屋台ですと一食数百円で済みます。そして三日目にヤワラートで散財するのです。

同期が横浜税関、気仙沼出張所の所長になったので一度伺いました。フカヒレ入りのラーメンから握りずしまでありました。実は、気仙沼は香港・シンガポールなどの有名中華レストランも仕入れる程の極上のフカヒレの産地です。フカヒレは手間暇がかかる厄介な料理です。ヤワラートの乾物屋には乾燥フカヒレも売られています。何回か挑戦したことがありますが、なかなかお店で出されるような味が出ませんでした。水に二日かけて戻し、ごみの様なものをピンセットで丁寧に除き、鶏ガラのスープを出して濃くし、シイタケも同様に戻し、最低半日弱火で煮て柔らかくしなければなりません。乾燥フカヒレは大きく見えますが、水に戻し煮ますと長さが四分の一以下に縮んでしまいます。やはり専門店で注文して食べるのが一番です。素人には手に負えません。ヤワラートは中華街なので、中華の食材が手に入ります。例えば、拳骨くらいの大きさのザーサイ、銀杏などをジュネーブに買って帰ったものでした。また、ここでは、バンコク空港の値段の半値以下で同じお土産品を買うことが出来ます。

一度、観光案内に「三大スープ」を味わえるということでバンコクからマレイシア国境に近い怪しげな町、ハジャイに半日かけて単身行きました(当然休みの日です。)。三大スープとは、「フカヒレ」、「ツバメの巣」と「鶏黒骨」スープでした。店の選択を誤ったのかどうかわかりませんが、勇んでいきましたが帰りはションボリでした。最近はクロマグロもそうですが、フカヒレ(代表的なものはヨシキリザメ)も水銀が体内に蓄積されているとの報道がされています。大枚はたいて偽物とは情けない話ですが、近くの国ではキャビアのように人造のものが出回っているとも伝えられています。そのうち、幻のフカヒレになるのでしょうね。ハジャイはマレイシアに近いので結構イスラム系のタイ人が多くいます。このため仏教徒といざこざが起きるのはタイ南部が多いと言われています。

突然ですが、ASEAN加盟国6ヵ国時代の「裏の公用語」はご存知でしょうか。これで今回の締めとしたいと思います。インドネシア、マレイシアとブルネイは表の公用語でもマレー語です。フィリピンとタイの南部はイスラム系住民がおりますのでマレー語が通じます。残るシンガポールもインドンネシアとマレイシアに「挟まれて」いますので通じます。そう、答えはマレー語なのでした。

2018年6月15日 掲載
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