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原産地関係エッセイ・論文・講演資料

連載 第四十四話-UNCTAD・GSPセミナーこぼれ話(その15)-

UNCTAD勤務時代、台湾には同国が国連のメンバーではないため実際上行けませんでした。国連の統計上、台湾の貿易は、記憶に間違いがなければ「Other Asia」というバスケット・カテゴリーに区分されていたと思います。APECを担当しているときは、台湾がChinese Taipeiという名称でAPECのメンバーでしたので公用、私用で行くことが出来ました。香港も特別な行政地域としてAPECのメンバーになっていますので、APECでは「Country: 国」なる語は使わず、「Economy」と称します。地域が加盟している関係で、取り上げる対象は経済問題で政治問題は扱いません。ところが、APECのアジア・欧州版のASEMは「国」だけがメンバーですので、国という語が使えます(EUの加盟国数が28と拡大した関係で、アジア側とのバランスが悪くなりました。このため、アジア側はインド、パキスタン、カザフスタンなどの新規参加を得て、当初の10か国から21ヵ国に倍増させました。)。また、政治問題も話題に出来ます(設立当初、EU側が東ティモール問題やミャンマーの軍政を繰り返し取り上げました。)。ADBの場合、原加盟国であったのは国連同様台湾でした。その後、大陸の中国が加入しました。これに伴い、台湾の呼称は「中国台北」となりました。WTOは独立した関税地域を有する地域についても加入を認めていますので、台湾は加入後Chinese Taipeiという略称で呼ばれています(正式名称は、Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsuです。)。どのGSP供与国も途上国のみならず地域に対して特恵関税を与えています。今回は、台湾から切り出しましたので、南国の果物から始めてみたいと思います。

【熱帯果物】

筆者は一応熱帯地域(Tropical Area)に住んでいますので、日本にはない熱帯地域特有の果物があります(蛇足ですが、「一応」と書いていて、昔、輸入課時代のこと、ある係で通達案を起案していて非公式に税関に感触を聞いていましたが、原案の中に「一応」という語があり、関西方面の税関から、「関西では、一応という言葉は何もしないことも含まれますがそれでよろしいのでしょうか」というコメントが出されたことを思い出しました。結局、「一応」は通達用語には馴染まないということで使わないことになりました。)。バナナをはじめ日本のGSPの対象産品も含まれます。人によって南国の果物の「王様」(若しくは女王)には好みによって違いがあり、ドリアンを推す人もいれば、マンゴスティンやパパイヤを推す人もいることでしょう。1996年はフィリピンがAPECのホスト国で、閣僚会議のために出張された審議官はドリアンを所望され、ビニールテープでグルグル巻きにしてから更にプラスチック・バッグを幾重にも重ねてホテルに持ち込みましたが、努力の甲斐もむなしくエレベータではあの特有の匂いが漏れました。審議官はバクバク健啖ぶりを発揮されておりましたが、同じく出張中の局長は部屋に入るなり異様な匂いに辟易して、すぐさま自分の部屋に戻られました。ドリアンは好き嫌いの激しい果実の王様なのかもしれません。真打の家に居候中は季節になりますと道端でタイからの輸入ドリアンが手頃な値段で買えましたので時折食べたものです。他方、シンガポールの地下鉄には持ち込めないと聞いたことがあります(これも蛇足ですが、シンガポールに出張していた頃は、チューインガムは販売禁止品目でした。)。

閑話休題。筆者の一押しはマンゴーですが、何故か、関税法第70条の他法令確認の対象となっている植物防疫法では「マンゴウ」と表記されています。ものの本によればマンゴーはウルシ科に属する樹木のため、食べると唇のまわりがウルシに負けてかぶれる場合があると解説されていますが、そのような人に出くわしたことはありません。最近のマンゴーは品種改良が進み大丈夫なのかもしれません。日本では沖縄が最大の生産県ですが、やはり、第二の生産県宮崎県の「太陽のタマゴ」とキャッチフレーズされたマンゴーが有名だと思います。インドやメキシコ産の外側がリンゴの様な色をしたタイプのものや、タイ、フィリピンのような皮が黄色のものなど結構種類が豊富です。台湾では一個が1キロを超えるジャンボ・マンゴーに出会い本当にビックリしました。二個買いましたが大ぶりなだけあってフィリピンのものより甘さは落ちるかなと感じました。日本に入ってくるフィリピンのマンゴーは皮が薄くて黄色い品種で、植物防疫法施行規則では「フィリピン共和国産マニラスーパー種のマンゴウ生果実」という言い方をしていますが、有力な説は、このマニラスーパー種のマンゴーはどうもネグロス島辺りのものが起源だと言われています。植物防疫法上の条件を満たすことを条件にフィリピン産のマンゴーは1975年から輸入が認められています。メキシコ、タイ、台湾、フィリピンが日本への主な供給国です。マンゴーを食する時、現場では刃物は不要です。フィリピン産のマンゴーは皮が薄いので簡単に手で皮をむくことが出来るからです。

UNCTAD勤務最初の3年間はマニラと書きましたが、甘いはずのマンゴーで苦い思い出があります。当時は既に日本への輸出が可能で、フィリピンサイドの業者に頼みますと日本に「宅配」が可能でした。当方は喜んでいただけるものと思い何人かに送りました。が、お礼の連絡はまばらでした。後日理由が判明しましたが、この業者はバナナと同様まだ完熟していない青い状態のものをまとめて日本に送り、日本の倉庫で追熟して黄色くなったものを詰めて宅配していたのでした。つまり、マニラで味わう完熟した甘みの強いものとは異なり、いまいちということだったのです。ちょっとした思い込み違いでした。フィリピンでは、簡単な「おつまみ」として熟していない酸っぱいグリーン・マンゴーが出されます。妊婦さんの好物とも聞きました。日本では、スイカ(タガログ語でパクワンといいますが、どうも「タクワン」に聞こえてしまいます。)に塩を振りかけて食べますが、これを話すと現地の人に大笑いされます。他方、こちらではパイナップルに塩をかけて食べますから、今度はこちらが笑う番なのです。

ADB勤務時代、国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)やWTOの専門家をお呼びして「SPS協定」(Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures: 衛生植物検疫措置の適用に関する協定)に関するセミナーを開催しました。農業大国タイでも検疫問題のため先進国市場への参入は容易ではないとのことでした。他方、成功例の一つがメキシコなどを原産とするサボテン科のドラゴンフルーツで、ベトナムの専門家に米国市場への参入を果たした経験談を披露して頂きました。こぶし大の大きさで代表的なものは中が白色で胡麻の種のようなぽつぽつのある果実です。日本にも入ってきていますので食された方も多いと思います。果物は概して甘く、このことが繁殖というか生き残りの重要なファクターになりますが、一旦貿易となりますとこの甘さが仇になり、特に、ミバエなどが蔓延するため、日本のような島国では一旦入ってしまうと駆除が大変です。このため水際で侵入を止めなければなりませんが、検疫の世界では基本的に輸出サイドのみならず輸入サイドでも防疫措置をとるダブル検疫が常識のようです。検疫の重要性は外交官の不可侵の権利さえも超越してしまいます。確か、「外交関係に関するウィーン条約」においても検疫の必要があれば、税関等は外交官の荷物も検査できるはずです(因みに同条約第36条第2項に「外交官の手荷物は、検査を免除される。ただし、手荷物中に…検疫規則によって規制されている物品が含まれていると推定すべき重大な理由がある場合は、この限りでない。」と規定されています。)。

【アヒルのタマゴ】

この項目は読者の皆さんが近い将来フィリピンに行くことになり、友人宅に呼ばれたときとか、カラオケの余興の際、試食・味見することを半ば強制される事態に発展することも考えられ、結果として現地における悪い思い出とならないよう「洗礼」を避けるために書きます。東南アジアでは孵化直前のアヒルのタマゴのゆで卵がありますが、フィリピンではバルット(balut)と言います。決して高級なものではなく、屋台や庶民の定食屋においてありますし、夕方、庶民の住宅街に売りにくるような食材です。庶民の間では滋養強壮に良いと信じられており、離乳食としても使われています。筆者も洗礼を受けた口ですが、茹でているとはいえ孵化が進行している途中の卵ですから中は通常我々が口にする鶏卵とは異なり、ある程度の形ができているのです。事情通に言わせますと、孵化開始後16日から18日のものを茹でるそうで、日にちが経つにつれ卵の状態から羽状のものに実質的に中身が変更されてしまっています。一度だけ目を閉じて16日のものを経験したものの、結論は無理して体験することはないと断言できます。バルットに嵌ってしまったという日本人に遭遇したことはありませんから、これもドリアン同様好き嫌いが激しい食材かもしれません。なお、アヒルの足も中華には欠かせないと見えて、香辛料の八角などを入れて長時間煮て味を付けます。西洋人が食べているのを見たことはありませんが、ゼラチン質を好む東洋人は結構いるようです。筆者は中国でのセミナーの際、コリコリしたアヒルの舌の一品を出されたことがあります。こういう話題は、この辺で終わりにしたいと思います。

フィリピンが出たついでに、代表的な料理に触れます。スープはシニガン・スープでタマリンド(当地ではサンパロックといいます。)の酸っぱさを強調した野菜とエビ(又は豚肉、魚がありますが混ぜることはありません。)の組み合わせが代表的なものです。ご馳走は炭火による豚の丸焼き(レチョン、若い豚はlechon de lecheと呼ばれとても柔らかい肉です。)で肝臓をすりつぶして甘く仕上げたようなソースにつけて食べます。フィリピン人の多くは海洋民族ですので魚介類が大好きで、特に、エビ・カニ類は恋人が喧嘩をしていてもこれを食べますと仲直りができると言われています。お米はインディカ米でパサパサしています。二毛作や三毛作が可能ですが、単位当たりの収穫量はそれほどでもないと言われています。野菜は結構そろっていまして、例えば、オクラなどは日本のスーパーでも見ることが出来ます。バギオという日本の軽井沢のような高地(12月には気温10度を切ることがあります。マルコス元大統領は盛夏(3〜5月)にはバギオで執務をしていました。)では、野菜の栽培に適しているようで、「バギオ野菜」はブランドとなっています。いちご、インゲン、アスパラガスなどが有名です。日本人が教えたのだと思いますが、ゴルフで池に落とすと当地のキャディから「ポチャン」と言われますが、この池に密集して生えているのがカンコン(空心菜)で安いのでよく料理に使われます。

今回は当地の代表的な調味料で締めくくりたいと思いますが、食酢は「スーカ:suka」(サトウキビから製造するのが一般的ですが、ヤシの木に傷をつけ樹液を集めますとローカル・ワインのようなトゥバ:tubaになり田舎では回し飲みします。数日たちますとsukaに実質的に変更されてしまい、最早酸っぱくて飲めません。)、醤油は「トヨ: toyo」(キッコーマンでも通じます。)、魚醤は「パティス:patis」、フィリピン風塩辛は「バゴオン:bagoong」(これには二種類があって、アミを使ったものが一般的ですが小魚のもあります。瓶詰で売っており、日本だと上野のアメ横に入ってすぐ右側のビルの地下にフィリピン食材店があり、そこで買えます。グリーン・マンゴーにもつけて食べます。)などが代表的です。日本のすだちのような直径2〜3cmの柑橘類があり、カラマンシ(Calamansi)と呼ばれレモンの代用になりますが、ジュースにもなり日本はフィリピンの要望を入れGSP農産品の対象品目に追加しました。

2018年6月29日 掲載
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