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八丁堀梁山泊 第56話

2021年度JASTPRO調査報告のご紹介

2021-06-28

 2021年度の調査報告書は、『アジア太平洋地域における広域FTA・EPAの活用のために~ 重なり合う原産地規則の実態と問題点 ~』と題し、近い将来に発効が予想されるRCEP、英国の参加表明で世界展開を見せるCPTPPに加え、日本、中国、韓国、インド及びオーストラリア・ニュージーランドとのアセアン「プラス1」協定の特定品目セクターに適用される品目別原産地規則を分析し、アジア太平洋地域に幾重にも重なり合うFTAの有効活用について考察します。二国間協定が主役の座を占める我が国との直接の輸出入ではなく、グローバル・バリューチェーンに考察の視点を置き、我が国の製造業の進出先のアジア太平洋諸国での資材調達、同地域の第三国への製品・部材輸出に関する広域FTA活用戦略に資することを目的としています。
 本年度調査においては、各論として、まず第2編「機械類・エレクトロニクス製品等(第84類、第85類)、第3編「自動車・自動車部品(第87類ほか)及び第4編「繊維・繊維製品(第50類から第63類まで)」の調査を先行させ、第4四半期に各編の総括を行い、その後に第1編「アジア太平洋地域の広域FTA原産地規則の活用方法」をまとめます。
本報告書の調査・分析は、以下の視点で行なう予定です。

背 景
 かつて世界市場を席捲した我が国の製品群の多くが、今日では途上国への技術移転を背景とした生産活動からの撤退、途上国への生産拠点の移転又は生産委託によって我が国からの「made in Japan」製品の輸出が影を潜める状況となっています。また、これらの製品群に対しての我が国のMFN税率のほとんどが無税となっているため、輸入に当っては特恵制度を使用するまでもありません。したがって、我が国の製造業の進出先であるアジア太平洋地域の製造拠点から製品を域内第三国に「横持ち」する場合に、重層するFTAのいずれを活用すべきかを選択するFTA戦略が無視しえない重要な位置を占めることになります。
アジア太平洋地域の途上国ではこれらの製品に関税が課されることが一般的であるので、第三国間貿易への広域FTAの活用に当たっては、日系企業であるからといって我が国が締結したEPAのみを利用する必要はなく、特恵税率がより低く、原産地規則がより緩やかな協定を活用すべきと考えます。
 また、我が国からアジア太平洋諸国に直接、特恵輸出を行う場合であっても、現時点では譲許税率のステージングで先行している二国間協定の適用を考慮すべきですが、累積規定の適用で材料調達上優位に立つ広域FTAの譲許税率ステージングが二国間協定に追いついた時点で広域FTAの利用に舵を切ることが肝要と考えます。したがって、今後の特恵貿易に係る企業戦略は、(i)譲許品目カバレッジでの比較、(ii)譲許税率のステージング進行状況の把握、そして(iii)原産地規則の正確な把握が必要となります。今回の調査報告は、アジア太平洋広域FTAにおける特定品目セクターについて上記(iii)を実施することになります。

調査・分析内容と成果物
  • 調査対象品目について、CPTPP、RCEP、アセアン「プラス1」協定(日本、中国、韓国、インド、豪州・NZ)及びアセアン物品貿易協定(ATIGA)のそれぞれの品目別規則を一覧表をHS2017年版をベースに作成し、各品目に求められる原産地基準が一覧で把握できるようにいたします。
  • 一覧表では、品目別規則として採用されている規定が、①原産性の要件具備及び証明の観点から申告者にとって最も使い勝手のよい関税分類変更基準の「号変更」(背景色:白)、②より厳格な「項変更」を単独又は選択肢として含む(黄)、③「付加価値基準」のみを要件とする(オレンジ)、④「完全生産品」を要件とする(茶)、のいずれに当たるかを背景色を塗り分け容易に比較できるようにします。(ホームページ「原産地規則の研究」ページでカラー版をご覧になれます。)
  • しかしながら、例えば、第84類(機械類)、第85類(エレクトロニクス製品)の製品は、部品の組立てによって生産されることが一般的であるので、HSの構造上、専用部品の項から製品の項への変更に無条件で原産性を与える「項変更」規則についても「号変更」規則と同様に白としました(例えば、エンジン部品(第84.09項)から第84.07項(ガソリン・エンジン)、第84.08項(ディーゼル・エンジン)の組立て)。
  • HS2017年版の一覧表には、過去のHS改変でどのようにカバレッジが変更したかについて追跡できるように配慮します。また、アジア太平洋地域の広域FTAの中で唯一HS改変に対応できていない日アセアン協定について、可能な限り、HS2002年版の品目別規則の2017年版への合理的範囲での読み替えを示すことにいたします(詳細版は作成いたしません。)。
  • 第4四半期に公開する第1編では、原産地手続分野についても調査・分析の対象とし、各スキームの原産性証明要件、積送要件についても比較し、使い勝手の良さを比較検討します。

ホームページでの公開
 四半期毎に各編の本文及び一覧表(抜粋)を「調査研究」コラムの「月刊JASTPRO」ページに掲載します。賛助会員は、各編の完結版を四半期毎に、年度末に報告書全編を賛助会員限定公開ページでご覧いただけます。賛助会員限定公開ページでは、一覧表(全品目)を検索・並べ替え可能なエクセル形式でも提供します。

印刷物の配布
 法人賛助会員には、印刷物でもお届けいたします。

著作権とご利用にあたってのご注意
 成果物の著作権は一般財団法人日本貿易関係手続簡易化協会に帰属します。一覧表(エクセル形式)はデータベースとしての著作権を有するものです。二次的な利用に当たっては当協会の事前の許諾を得た上でお願いいたします。


文中、意見に及ぶところは筆者の個人的な意見であり、JASTPRO又は関係諸機関の見解ではないことを予めお断りしておきます。