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八丁堀梁山泊 第63話

RCEP原産地規則についてのご質問と回答(続編)

2021.09.28
JASTPRO主席研究員 今川博
 
前回第62話について、読者から更に質問をいただきました。ご精読ありがとうございます。八丁堀梁山泊のタイトルの通りワイワイ、ガヤガヤと読者の皆さんと議論したいと思っておりますので、ご質問、ご意見、投稿をお待ちしております。

さて、ご質問は以下の通りです。

RCEP方式では「除外されている材料」は、加工工程の上流の関税分類が異なる材料から生産されていれば「最終製品の原産性要件を満たす」ので(62回説明)
について、

(i) これは、RCEPのどの条文が根拠か。
(ii) TPP11の附属書 3-D 第 A 節 3(d)に相当する条文がRCEPには見当たらないが導けるのか。

まず、質問 (i) は、RCEP附属書3A 品目別規則の「附属書に関する頭注」5と6に関連規定があります。
RCEP附属書3A 品目別規則
附属書に関する頭注
5    関税分類の変更(以下この附属書において「CTC」という。)の要件は、非原産材料についてのみ適用する。
6  CTCの規則が他の関税分類からの変更を明示的に除外する場合には、その除外は、非原産材料についてのみ適用する。

質問 (ii) は、上記の頭注6に関連します。
この注は、関税分類変更から特定材料が除外されている場合、非原産である当該特定材料を最終製品の生産に使用したら関税分類変更は満たせない(生産工程上、さらに上流で当該特定材料と異なる関税分類の粗原料から生産すべき)ことを意味します。

注5と6は1970年代からの特恵原産地規則の基本的考え方によるものです。創設期の特恵原産地規則では、非原産材料=輸入材料という考え方で、最終製品の原産性判断には「何が輸入材料か」を突き止め、材料の関税分類番号と製品の関税分類番号を比較するという手法がとられていたため、このような考え方が基本となっていました。

一方、1980年代後半になると、中間材料の考え方が導入され、材料段階で原産品となった原産材料は関税分類変更基準の対象から外してもよいことになります。ロールアップ規定とも呼ばれますが、RCEPの第3.12条(生産において使用される材料)は、これを認める規定です。

非原産材料についてこの章に定める要件を満たすような更なる生産が行われる場合には、当該非原産材料は、その後に生産される産品の原産品としての資格を決定するに当たり、当該産品の生産者が当該非原産材料を生産したかどうかにかかわらず、原産材料として取り扱う。

したがって、前回解説の最後の部分にあるように、①締約国外から輸入された非原産材料が何であったかをトレースしていく当初の方法と、②使用材料の素性を洗い出して原産性のある材料を関税分類変更の対象から除外していく方法の両方が可能となっているわけです。そのため、筆者は、RCEP原産地規則の解釈において、
(i) 最終製品の関税分類変更基準を満たす粗原料からの生産が行われれば、最終製品は原産品となり、又は
(ii) 関税分類変更から除外される特定材料が、当該特定材料に適用される品目別規則を満たすことが立証できれば、当該特定材料は原産材料として当該関税分類変更の要件から除外してもよい、
と考えます。最終製品の原産性判断に当たっては、この二つの方法を上手に使い分けて原産性の立証をすればよいのです。TPP11の規定では(ii) の方法を「してもよい規定」ではなく「国内での原産材料生産を強要する規定」として定めているので、特定材料の品目別規則によっては (i) の方法だけで原産品とならない場合が出てきます。

(筆者の個人的見解であって、当局の公式見解ではありません。)