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調査研究報告書

アジア太平洋地域における広域FTA・EPAの活用のために

2021年度 調査研究報告書(2022-04-11・2482KB)

 2021 年度の調査報告書は、一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会(以下「JASTPRO」)の2021 年度(令和3年度) 事業計画に基づき、広報等普及事業の「制度・電子化に係る調査研究」として、アジア太平洋地域において2022 年1月に発効したばかりの地域的な包括的経済連携協定(以下「RCEP」)と2018 年12 月に発効した包括的・先進的TPP 協定(以下「TPP11」)の二つのメガEPA に加えて、アセアン構成国10 ヵ国が周辺国と個別に締結する「アセアン+1」協定及びアセアン物品協定(以下「ATIGA」)の特定品目セクターに適用される品目別原産地規則を分析し、同地域に幾重にも重なり合うFTA・EPA の有効活用について考察します。
 本年度の調査は、二国間協定が主役の座を占める我が国との二国間貿易を対象とするのではなく、グローバル・バリューチェーンの観点から我が国の製造業の主な進出先であるアジア太平洋地域での資材調達、製品・部材輸出に関する原産地規則の観点からの広域FTA・EPA の最適活用戦略に資することを目的としています。
 かつて世界市場を席捲した我が国の工業製品群の多くが、今日ではコスト高、途上国への技術・生産拠点の移転又は生産委託によって我が国からの「made in Japan」製品の輸出が影を潜める状況となっています。また、これらの工業製品群を我が国に輸入する際のMFN 税率のほとんどが無税となっているため、輸入に当っては特恵関税制度を利用するまでもありません。したがって、我が国の製造業の進出先であるアジア太平洋地域の製造拠点から製品を域内第三国に「横持ち」する場合に、アジア太平洋地域の途上国ではこれらの製品に関税が課されることが一般的であるので、重なりあうFTA・EPA のいずれを活用すべきかを選択する特恵貿易戦略が無視しえない重要な位置を占めることになります。すなわち、第三国間貿易への広域FTA・EPA の活用に当たっては、日系企業であるからといって我が国が締結したEPA のみを利用する必要はなく、特恵税率がより低く、原産地規則がより緩やかな協定を活用すべきと考えます。
 また、我が国からアジア太平洋諸国に直接、特恵輸出を行う場合であっても、現時点では譲許税率のステージングで先行している二国間協定の適用に理がありますが、製品分野によっては、累積規定の適用で材料調達上優位に立つ広域FTA・EPA の譲許税率ステージングが二国間協定に追いついた時点で広域FTA・EPA の利用に舵を切ることが肝要と考えます。したがって、今後の特恵貿易に係る企業戦略は、(i)譲許品目カバレッジでの比較、(ii)譲許税率のステージング進行状況の把握、そして(iii)原産地規則の正確な把握が必要となります。今回の調査報告は、アジア太平洋地域の広域FTA・EPA における特定品目セクターについて上記(iii)を実施することになります。
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非特恵原産地規則 ~ 米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較 ~

JASTPRO 令和2年度 調査研究報告書(5151KB)

 本調査報告書は、一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会(以下、「JASTPRO」)の令和2年度(2020年度) 事業計画に基づき、広報等普及事業の「制度・電子化に係る調査研究」として、原産地表示における原産国決定、特殊関税の適用における対象国の決定等に際して使用されながらも、世界標準が存在せずに各国の国内法で規律される非特恵原産地規則のうち、米国、EU及び我が国で適用されている規則を調査対象としました。
 米国については、三つの法源を調査対象としています。一つ目は、米国への製品輸出に義務付けられる原産地表示、対中国追加関税措置の原産国決定、日米貿易協定上の米国への輸出産品の材料原産地の判断等に使用される米国判例法としての「実質的変更」の概念に焦点を当て、主要品目分野毎に原産地判断の傾向を調査し、米国税関の判断事例も数多く紹介しています。二つ目は、NAFTA構成国との貿易のみに適用されるNAFTAマーキング・ルールで、メキシコ又はカナダからの輸入に際しての原産国表示を規律する法規として「実質的変更」の概念に代わって適用されます。三つ目は、繊維・繊維製品分野にのみ適用される制定法としての繊維ルールです。繊維・繊維製品分野には、「実質的変更」の概念に基づくルール、NAFTA諸国から輸入される物品であってもNAFTAマーキング・ルールの適用はありません。
 EUについては、2013年EU関税法典(EU規則第952/2013号)の第60条を根拠規定とし、ピラミッド型に下位法規に詳細規定を定める一連の非特恵原産地規則を調査対象としました。興味深い点として、関税法典第60条の実施のために制定された委員会委任規則 (第2015/2446号) 第31条から第36条に置かれる一般規定及び附属書22-01に規定される品目別規則のみが法的拘束力のある規則であって、附属書22-01の品目別規則に記載されない品目についてはEUのWTO非特恵原産地規則調和作業におけるEU提案が品目別規則として適用されますが、法的拘束力がないということです。このような立法手法はEU独特のものといえそうですが、こうした法体系がどのように運用されるのかについても調査の対象としています。
 最後に我が国の非特恵原産地規則についても調査の対象としています。我が国の非特恵原産地規則の法源は法律レベルにはなく、関税法施行令(政令)の規定に基づき、関税法施行規則(財務省令)、同基本通達と下位規則に詳細を委任する方式を採用しています。米国、EUの規則と異なる点として、一般規定のみが存在し、品目別規則を持たないことが挙げられます。このため、判例法体系に不慣れな日本人にとって複雑怪奇と言える米国の非特恵原産地規則に比較して、あまりの簡素さに驚かれるかもしれません。
(続きはPDFファイルをご覧ください。)

EU 特恵原産地制度における証明及び確認実務に関する調査

JASTPRO 平成30年度 調査研究報告書(2852KB)

 2019年2月1日に発効した日EU経済連携協定においては、原産地証明制度に関して前年12月30日に発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(以下、「TPP11」)に続いて、産品の原産性を輸出者、生産者又は輸入者が自ら申告し、関税上の特恵待遇を享受することになりました。
 日EU・EPAは、我が国においては日豪経済連携協定(第三者証明制度と併用)、TPP11に続く3番目の自己申告制度を採用したEPAであり、EUとしても輸出者による自己申告制度を採用したEUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)に次いで2番目のEPAとなりますが、輸入者による自己申告を採用した協定としては初めてとなります。
 新制度の導入を伴うEPAの実施に関しては、特に協定発効直後において、執行当局及び輸出入者ともに事例の蓄積がないことから、通関実務において混乱が生じ易くなることが、これまでの経験則上、明らかでした。そのため、協定発効後可能な限り速やかに「標準的な原産地申告の手順」を関係当局の了解を得た上で周知し、貿易円滑化に資することが望ましいと考えました。
 我が国におけるEUへの輸出又はEUからの輸入に関する国内手続きは、原産地自己申告制度の執行当局である財務省関税局・税関、貿易を所掌する経済産業省のみならず、JETRO、商工会議所等の諸機関においてもウェブサイト、セミナー、説明会等において、協定発効直前・直後に輻輳的に周知活動が行われています。しかしながら、EU域内における原産地自己申告の手続き及び関税上の特恵待遇を受けるための手続きについては、これまでのところ概要の紹介に留まり、詳細について調査報告している資料は存在しません。
 そこで、本年度のJASTPRO調査研究事業は、未調査分野であるEU側における特恵輸出入手続き及び28ヵ国の関税同盟としてのEU内部の部材の移動の際に当該物品の原産性を明らかにする書面である「サプライヤー宣誓」の取扱について調査し、調査結果を周知することで、当協会賛助会員をはじめとする対欧州貿易に従事する企業者の方々への支援とすることとしました。
(続きはPDFファイルをご覧ください。)